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最古の魔人  作者: 癒しメモリー
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最初の人族

物語が落ち着くまでイベントまでの道中などは描写しません。私の脳内で進行されます。必要だと思う部分は書きますが、物語に影響しない部分はカットしていきます。後日書き足すかもしれません。


「助けてー」

 

 深い緑に覆われた地「アスト森林」から助けを求める声が聞こえる。


 ギュルルウゥゥ


 まるで地の底から這い出る魔物のような声もまた響く。


「いったいいつまで歩けばいいんだ。さすがに疲れてきた」


 まぁ全部自演なんだが。それも仕方ないというものだ。あのバカアストと別れて歩き始めて早数か月、一向に森から抜けられる気配がない。バカ龍のところに戻って運んでもらうのも考えたが、もうすぐ出られるかもしれないというよく分からない考えのせいで戻るに戻れなくなってしまった。


「もうリングアイテムボックスの中にも食料がないぞ」


 これが目下の問題、いや大問題だ。食料が無いのは本当にヤバイ。さすがに魔人とはいえ腹が減らないわけではない。何とかして食料を調達する必要があるが、今までに見かけた魔物は虫系や物質系ばっかりだ。せめて獣系の魔物に来ていただきたいところだ。


「復活して早々餓死とか笑えないぞ」


 呪縛の指輪を外せばどうとでもなるだろうが、外したら負けな気がする。何との勝負かは自分でも分からないが。空腹で意識が朦朧としているのかもしれない。いよいよ限界か?


「助けてー」


 再度情けない声をあげる。これを聞いて人族とかが来てくれればいいし、魔物が引き寄せられたとしても大歓迎だ。虫だろうが石だろうが食べてやろう。


「石を食べるくらいならそこらへんの葉っぱのほうがマシか・・・」


 ふと近くにある木を見上げてみると赤い木の実のようなものが視界にうつる。


「これは俺に食べてくださいと言っているんだろうなきっと」


 背伸びだけでは届かないのでジャンプする。自然の恵みに感謝だな、などと考えていたら木が動いた。

は?


『キシャアァァ!』


 樹木系の魔物か!完全に油断していた。無防備に伸びきった体に強烈な打撃が叩きつけられる。肺の中の空気が全て吐き出され呼吸困難に陥る。

ゆっくりと立ち上がりながら落ち着いて呼吸を整える。


「はぁ~、感知魔法を切るべきじゃなかったな。まさかこんな擬態カモフラージュに騙されるとは・・・」


 自分の不注意に落胆しながら目の前の魔物を睨み付ける。それだけで木の魔物は後ずさり始める。

力の差が分かるなら大人しくしていて欲しいものだ。


「いいか、俺はお前の頭になってる木の実が欲しいだけだ。殺されたくなかったらじっとしていろ」


 言葉は通じるのか?まぁ通じなくてもやることは変わらない。再度木の実に手を伸ばす・・・よし大人しくしているな。

全部取っていいのか?いや騙した罰だ全部持っていこう、腹も減ってるしな。


「これだけあれば一週間はもつだろうか」


 赤い実を全部リングアイテムボックスの中に収納する。目覚めてから自力で得た初の食料だ、感動的だな。

 考えてみればこんな風に木の実をつけて獲物を誘う魔物がいるということは近い場所に生き物もいるはずだ。木の実を使えば俺でも釣れるか?いやいや待て待てここに住む考えになってきてる。

 俺は人族に会いに行くんだ、この森は中間地点だ、目的地は南東にあるはずの人族の国だ。しっかりしろ!そう自分に言い聞かせる。


「悩んでても仕方ないな、この食料が尽きる前に人族に合わなければ」


 呪縛の指輪を外して魔法を使えばこの大陸内の移動なんて一瞬だろう。・・・この食料が尽きてからでいいか。


 ・・・あれから数日歩いた。もう指輪外そうかな。ん?何か聞こえたか?耳までおかしくなったか?


「・・・--!!」


 !?いや、確実に俺以外の声だ!?今までの龍とか魔物のような声じゃない甲高い叫び声だった。どこだ?出来ればもう一回だけ叫んでくれ!!

 俺の寂しさと食料事情を癒してくれ!!


『キシャアァァァ!!』


 魔物の声だ!あの声の感じなら小さい魔物じゃないはずだ。感知を広げればすぐに反応がありそうだ。・・・あっちか!!

鬱そうと茂る木々をかき分けながら走る。そろそろ見えてくるはずだが・・・


「あれか!」


 木々の隙間から黒い影が動くのを見た。すこしデカイがさっきの木の魔物と同種のようだな。叫び声の主はどうやらコイツの向こう側らしいな。

 お前には悪いが俺の目的のためにここは退いてもらうぞ。


「らぁっ!」


 太い幹に腕をまわしそのままぶん投げる!・・・遠くのほうで衝突音がしたからちゃんと地面の上に着いたようだな。なら大丈夫だろう。

よし!叫び声の主はどこかな?


「あの・・・ありがとうございました」


 まさかあっちから声をかけてくれるとは思わなかった。なんて話しかけようか迷っていたところだったんだ。声の主のほうを見る。・・・無意識に息を飲んでしまっていた自分に驚いた。

 すぐ目につく長く鮮やかな栗色の髪、蒼穹を宿した眼と少し幼さを残した顔立ちは俺の基準で言えば十二分に整っている。正直に言えば年甲斐もなく見とれてしまった。悔しい。


「あの・・・」


 少し見とれすぎたな、せっかく助けたんだここで一気に友好を深めたい。


「・・・大丈夫か?」


 不愛想すぎるだろう俺。もっとマシな言葉はなかったのか。この俺が緊張しているのか?


「はい、命を救われました。感謝します」


 どうする?感謝されてるんだ、もう質問しても大丈夫か?先に名乗るべきか?いや彼女を安全な場所に送り届けるべきか?

くそっ!話すことがここまで困難だとは想定外だ。


「私はアイリスと申します。あなたのお名前をお聞きしてもいいですか?」


 先を越された、悔しい!いや、助けた側が率先して名乗るのも恩着せがましいか?

今は考えるときではないな。名乗り返すべきだろう。


「俺は・・・シンだ」


 ・・・もう不愛想で通すか?どうせ話を聞くだけだ。喋ることはあまりないだろうし。


「シン様ですね。命を救っていただいたこと、改めて感謝いたします」


 この娘アイリスといったか、いやにバカ丁寧だな。本人の性格によるものか?


「そんなにかしこまる必要はない。それよりこんなところで何をしていた」


じつは・・・トレントがつける赤い実。トランの実が必要なのです」


 トレント?あの木の魔物だろうか。あの魔物の実?あの赤い実のことだろうか。


「トランの実とはこれのことか?」


 リングの中から一つ赤い実を取り出す。


「え、今どこから・・・」


 どうやら実よりもリングアイテムボックスの方に興味が向いてしまったらしい。今の時代では珍しいものなのかもな。


「それよりこの実がトランの実なのか?どうなんだ」


 少し威圧的になってしまった。うまく話せないな。


「は、はい、その赤い実がトランの実で間違いないです」


「何故これが必要だったのだ。すこし酸味があるだけで旨くもなんともないぞ」


 そうなのだ、あれだけ苦労して手に入れたこの赤い(トランの実)。あの後食べてみて気付いたが驚くほど微妙な味だった。ほのかかに感じる程度の甘味にそれを塗りつぶす様に後から訪れる酸味。どちらかに偏ってくれたほうが良かった。

 こんなものが必要とは彼女の住む場所でも食料不足なのだろうか。


「え!?トランの実をたべてしまったんですか!?」


 ・・・なんだその不安に駆られる言葉は。食べたらどうなるんだ。


「・・・なにか問題でもあるのか」


「いえ・・・私の村ではトランの実を食べるのは腹を空かせた魔物ぐらいだと言われるので。体に悪いという話は聞かないので大丈夫だとは思うんですが」


 悪影響は今のところないし彼女の言うことが本当ならこれからも大丈夫だろう。ただ・・・これ魔物御用達の食料だったのか。泣けてくるな。

しかし、彼女はこれを必要と言っていたな。


「そんな実を何故探していた」


じつは・・・」


 彼女の話を要約すると、彼女は村で母親・彼女・妹の三人暮らしだったらしい。貧しいながらも幸せな暮らしだったらしいが先日母親が病死してしまったらしい。それで何故トランの実を探していたのかというと、どうやらトランの実を乾燥させたものがそこそこ高値で売れるらしい。

 まだ少女と呼べる彼女を雇えるほど村の経済は裕福ではないらしく、これしか方法がなかったという。そこまで危険を冒す必要は感じられないが、そういうご時世なのだろうか。

 ・・・俺が意地を張らずに魔法を使っていれば彼女の母親も救えたのかもしれないな。病気とはいえ少し罪悪感を感じるな。彼女を利用しづらくなってしまった。それも自業自得だな。


「そうか・・・そういうことならこのトランの実は譲ろう。俺が持っていても活用できないからな」


「あ、ありがとうございます!ありがとうございます!」


 涙目ながらに感謝を述べる彼女に再び罪悪感を感じる。これでは聞きたいこと聞いて村に送って「はいさよなら」なんて出来そうにないな。いや食料だけは欲しいが。

 

「村まで送ろう。歩けるか?」


「はい・・・あの、少しお待ちいただけますか?足が思うように動かなくて」


 彼女は自嘲気味に笑いながらそう言う。彼女には悪いが早いとこ村に行って食料を調達したい。罪悪感?あるにはあるが、だからといって俺の目標の妨げになるのはお断りだ。非道だと言われるかもしれないが、これでもかつては世界の破滅を目論んだ魔人だからな。仕方ないだろう。


「待たない」


 不思議そうにこちらを見上げる彼女を横に倒しながら、左腕を脚の裏に右腕を背中にまわして持ち上げる。・・・軽いな。

彼女はひどく驚いているようだ。まぁ承諾も何も得ていないからな、ただ顔を赤らめるのは勘弁してほしい。こっちまで変な気分になる。


「村はどっちだ」


「・・・」


「・・・村はd」


「っ!あ、あっちです!!」


 二度目の問いを言い切る前に答えてくれた。

頼む、その潤んだ目で見るのはやめてくれ。


「少し揺れるぞ」


「はい」


 そう肯定の返事をするとしがみつく様に強く抱き着いてきた。・・・揺れは減るが膨らみかけのものが当たる。

村までずっとこれか?心臓の準備運動が足りない、痛くなってきた。今の時代これくらいは普通なのか?

 俺自身どうやら多感になっているようだし、・・・面倒だな。


補足ですが母親の病気というのはいわゆる過労死と言われるものです。母親に関してはいずれ掘り下げると思います。

ブックマーク感謝です。

何か疑問点や誤字脱字などがありましたら感想・メッセージにお願いします。

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