最初の出会い
ナレーション部分を3人称から1人称に変えてみました。自分としてはこっちのほうがしっくりくるんですがどうでしょう?
光が収まってきた。早く調子を取り戻す必要を感じながら周りを見渡してみる。目に映るのは深い緑の森と地平線まで続く山脈そして、目の前の白い龍。
おそらくこの龍が俺の目標だろう。
「あんただな俺が感知した生体反応は」
これだけ巨大ならあれだけの生体反応も納得だ。しかし目の前の龍からはマーキングした時ほどの反応がない、というか何故この龍はこんなに呆然としているのか、隙だらけ過ぎて心配になるほどだ。
今の龍は全てこんなものなのだろうか。ついでに調べてみようか。
『お前は・・・悪魔か?』
悪魔?この龍は何を言っているんだ。確かに魔族ではあるが悪魔などではない。あんな悪辣な存在と混同されるとは悲しい限りだ。
誤解を解いておく必要があるな。
「あんたが言う悪魔と俺の知っている悪魔が一緒なら違うとだけ言っておく」
これで納得してくれるかな?・・・ダメっぽいな明らかに怯えている。何が原因だ?わからないことは聞くしかないか。
「こっちからも質問していいか?なにをそんなに怯えているんだ?」
単にこの龍がビビりなだけの可能性もあるがどうだろう。俺の容姿が恐ろしく変貌したとかか?それとも力の差を感じ取っているだけか。
ん?力の差?まさか・・・
『その様に魔力を解放したままで近づかれては誰でもこうなるだろう』
やはりそうか。しかし魔力を抑えるなど今まで考えたこともなかったな。なにか良い方法はないものか。
それ依然にどのくらい抑えればいいのか。
「どの程度抑えればいいんだ?」
わからないことはすぐに聞いてしまえ。
『・・・今の一割程度まで抑えてくれ』
「一割!?そんなにか・・・」
一割まで減らすとなると調整が面倒だな。それならいっそ魔力を外に出せないようにするか。確か呪縛の指輪が右手の人差し指に装備したリングの中にあったはず。
「お?あったあった」
このリングはアイテムボックスの魔法を付加してからずっと身に着けているな。目覚めてから存在を忘れていたな。
それはともかく、リングの中から呪縛の指輪を取り出す。この呪縛の指輪は装備者の魔力を封じる魔道具で過去の大戦の最中作られたが、まず指に着けることが出来ない故にお蔵入りした曰くつきだ。まさかこんなとこで役に立つとは・・・
「これを付ければ魔力は感じなくなるはず・・・どうだ?」
呪縛の指輪を右手の中指に装備する。これで改善されなければ正直ほかに手は浮かばない。
『信じられん・・・先ほどまでの魔力の重圧が嘘のようだ・・・』
どうやら問題ないらしい。これでようやく話を聞けるようになるか?
「さて、問題は解決したか?いろいろ聞きたいことがあるんだが」
今の世界のこととか、神々と俺たちの戦いが伝えられているかとか聞きたいことはたくさんある。
『我は「世界の果て」の悪魔から世界を守る龍「アスト」』
ふーん
『お前が悪魔でないなら何者なのだ』
なるほど俺の存在はそういう風に伝わっているのか。しかし誰が伝えた?あの時代に俺以外の知的生命体がいたのか?
いや、そんな筈はない。だが実際にこうやって俺の存在が伝わっているということはあの時代を知っている者がいるということだ。
今もまだ受け継がれているなら俺にとっては僥倖だ。どちらの陣営であれ話を聞くくらいは出来るだろう。
『答えることが出来ないのか?』
龍、アストだったか?プレッシャーが増したな。世界を守る龍というのは冗談じゃなさそうだ。
俺が何者か見極めようとしているのだろう。俺も真剣に答えるしかないか。
「俺は・・・シン・・・魔人シンだ」
『シンだと・・・!?悪魔と同じ名!やはりお前が!』
アストのプレッシャーがさらに増していく。それより俺の名が悪魔と同じだと?これは意図的なものを感じるな。
まずはアストを落ち着かせるか。
「おいアスト、それは間違いだ。俺は悪魔なんかじゃない、あんな存在と一緒にされるのは御免被る」
『問答無用!』
アストに魔力が集まる。さっきまで怯えていたのによくこんなことが出来るもんだ。
仕方ない。
「少し痛いが我慢してもらうぞ」
殺さないように手加減しないとな・・・面倒だ。
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