絶望の邂逅
早速ですが別視点になります。これからもちょくちょく主人公以外の視点が入ります。
「世界の果て」でシンが目覚めるころ、山脈の塒で休んでいた龍はその魔力の奔流を感じ取った。
『なんだ!?』
いまだかつて感じたことのない自身を超える力をもつ存在。それが目覚めた。「逃げなければ」生存本能がそう激しく訴えかけてくる。しかし、自分は古龍「アスト」
最も古い存在に数えられるもの。塒にしているこのアスト山脈の名を冠するもの。「世界の果て」の悪魔から世界を守ることを使命とするもの。
その矜持が「アスト」を思いとどまらせる。どうするべきか思考していると、ふと気付いた。
『動かない・・・?』
目覚めたであろう悪魔はその場から微動だにしないまま時間が過ぎていた。
『まだ現世に馴染んでいないのか』
「アスト」がそう考えたのは、悪魔という存在が魂のみ現世に顕現し依代に憑依するのが世界の常識だったからだ。実際にはシンが寝起きで意識が覚醒していないだけだったのだが、「アスト」がそう考えてしまうのも仕方ないことだった。
まだ馴染んでいないならやることは一つ。
『完全に覚醒する前に、消滅してもらう』
まだ馴染んでいないうちに魂ごと依代を消し去ってしまうというもの。
『世界の一部が消し飛ぶが仕方あるまい』
そう言うやいなや周囲の魔力を集める。自身が使える最上位広域魔法「エンシェントブレス」を放つための準備を始める「アスト」。
魔力の集約が臨界点に達するという瞬間全身に悪寒が走る。
「見られている」
集中が乱れたことで魔力は霧散し「アスト」の周りに巨大な魔力溜まりを形成する。そんなことは関係ないと「アスト」は絶望を感じた。
『悪魔が見ている』
先ほどまで動く気配の無かった悪魔がこちらを見ていたのだ。周囲を見回しているわけではない、明らかにこちらの存在に気付いている。
喉元に牙を突き立てられている様な圧迫感。自らの巨体を覆う圧倒的な冷たい気配。
『無理だ』
世界の守護龍である古龍「アスト」。彼は一歩また一歩と後ろに踏み出すと、勢いよく振り向きその勢いのまま翼を広げ飛び立った。
願うことは一つ
『あれから離れたい』
その願いのおかげか悪魔との距離はずいぶんと離れた。首だけ後ろに向き背後を確認するが何も影もない、悪夢から目覚めたようにほっと息をつく。
もっと離れようと前を向きなおすと光球が目の前に現れる。
『な、なんだ!?』
先ほど払拭されたはずの不安が再び蝕む。しかし、目の前の光球から目が離せない、離してはいけないと本能が訴える。
何も出来ず呆然としていると光球が一つの人影になる。
「少し転移後の時間がかかり過ぎだな。やはりまだ本調子ではないな」
人影がそう呟くが耳に入っては抜けていく。
「あんただな俺が感知した生体反応は」
ただ眺めるしか出来なかった。目の前にいる「絶望」を
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