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序章
新作。
全10話予定。
グランドールの門番よ
決して屈する事なかれ
守りし宝は消せぬもの
誰にも渡してならぬもの
それは英雄王が手にした全て
彼の人が隠した大事な秘宝
***
この季節には珍しくない、綺麗な青い空の日だった。
そんな爽やかな日に相応しくない、悪寒が走るような人々のざわめきの中、ヴィアは一人立ち尽くしていた。怯えたような周りの大人たちの声も耳に入ってこない。
皆の視線の向かう先は同じだ。いや、かなりの者がそれに意識を向けても目は背けていた。
だが、ヴィアは大人たちが目を逸らすものを一心不乱に見つめていた。
身じろいだ誰かに肩がぶつかり、一歩前に踏み出す。ほんの少し距離が縮まって、見えるものが鮮明になった。
「ヴィア」
先日、怪我をして倒れている所を拾った青年が、悲痛な声で彼女を呼んだ。
まだ子供の、小さな体を守るように抱き締めてくる。
「見てはいけません」
青年のそれは、懇願に近い。
けれどヴィアは、青年の腕の中でも決してそれから目を逸らさなかった。
城壁に吊された、両親の亡骸から決して逃げなかった。