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FantasyAssault The Story of Altair (休載中)  作者: Kei
第1章Operation”YATAGARASU"
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第4話#2

 「初期攻撃命中!」


 「第2攻撃開始!」


 零次の指示を受け、翼は狙撃銃のトリガーを引いた。数百メートルの近距離とはいえ、時速100キロで対砲撃回避機動をとるヘリは、高性能スタビライザーを搭載したRWSでも照準が安定しない。それを完全な手動で、しかも僅か数センチの的に命中させるのは神業とも言える。

 翼が放った弾丸は、別のタイラントの右目に命中し、眼球を貫通して脳幹を貫いた。


 「ワンダウン!」


 「了解!イーフィン!対地掃射開始!」


 「了解!右舷RWS、シュート!」


 ガトリングガンがスピンアップし、森林に隠れた敵集団を木々ごと粉砕する。


 「機首部30ミリ機関砲、敵車両に向けて掃射!」


 「了解!」


 ヘリの副操縦手、竹内綾奈二等陸曹は、操縦席のサブコントローラーを操作し、機首部に設置されたM230機関砲の照準を合わせる。大和撫子な綾奈が操作するこの砲は、アパッチの機首部に搭載されているものと同じ30ミリ砲で、威力は絶大だ。

 

 「降下用意!」


 「了解!ノワール02、こちら01。ホバリングする!」


 〈02、了解!援護する!〉 


 友樹は瞬時にホバリングに適した場所を探し、ノワール02の支援を受けながらホバリングする。高度5メートルを維持すると、零次たちがファストロープ降下を実施し、即座に射撃を開始する。


 「レイン下がれ!」


 零次は叫ぶと、レインが下がりきる前に彼のすぐ近くにいたゴブリンに小銃弾を浴びせる。


 「下がる前に撃つな!」


 「悪かったな!綾奈、SCAR−H(スカー)を寄越せ!」


 〈了解!〉


 綾奈は上昇するヘリのドアからスカーを投げた。零次は、機上支援射撃用の7・62ミリライフルを受け取ると、そのままレインに投げ渡した。レインが受け取ると同時に、ルナが人の状態に戻りT10ライフルを構えた。


 「射撃しながら後退!奈々、的術師中心にを適宜排除!」


 「了解!」


 不知火奈々陸士長は、返事をすると同時に砦の城壁に取り付けらた飾りに飛び移る。青髪が特徴の零次の妹は、狭い足場を気にすること無くSR-25Mk11を構えて素早く照準を合わせる。

 

 「敵の術師…いた!」


 スコープの視界に術式を展開中の魔術師を捉え、即座に発砲する。展開中の術式に弾丸が命中し、エネルギーのバーストで術師は後方に弾き飛ばされる。魔力のバーストは銃の暴発と同じ状態で、ドジっ娘な魔法少女が魔術に失敗するとは訳が違って、外的要因、術式に何かが接触することで発生し、エネルギー量に比例して危険性は高くなる。

 奈々はそれを利用とした。


 「ッチ…そんなエネルギーじゃなかったのか…」


 吐き捨てると第2射を射撃する。今度は術師の額を正確に捉える。


 「ワンダウン…前方距離300に敵車両!FVM-10と思われる!」


 「ッチ…76ミリ光学砲搭載型か…ガンソード、ハイドラで森ごと吹っ飛ばせ!」


 〈ガンソード02、了解!〉


 ガンソード02は零次たちの頭上に飛来すると、70ミリ空対地ロケット弾ハイドラ70を連射する。着弾と同時に多目的対戦車榴弾を起爆させると、森の木々や岩を遮蔽物にしていた敵兵や車両を薙ぎ払う。FVM-10スパイク装軌装甲車4両も、ロケット弾の直撃や至近爆発を受けて行動不能に陥った。


 〈ガンソード02、攻撃。残敵を30ミリで排除する!〉


 〈ガンソード03、川対岸の敵を殲滅しました!〉


 「了解!民間人の渡河を急がせろ!」


 〈こちらガンソード04!警告!南西の山間部より敵部隊出現!〉


 「はぁっ!?真後ろ!?ガンソード04、詳細を教えろ!」


 〈1個大隊弱と推定される!戦車12!対空車両10!装甲車10!加えて戦闘魔物大小50以上!距離18000〉


 〈ガンソード02、北西の山間部より敵部隊!戦車12両、装甲車10、対空車両4!距離8000!〉


 「ガンソード、南西方向の敵部隊を優先的に排除しろ!」


 〈こちらアルタイル2、3、これより戦列に加わる!〉


 「遅い!アルタイル2の防衛に加われ!アルタイル3は民間人の退避を支援しろ!装甲車に怪我人を!機動戦闘車(MCV)は北側に!恒一、近くの戦闘機部隊に近接航空支援を要請しろ!」


 「了解!」


 アルタイル第2班は、96式装輪装甲車から降車するとすぐに戦列に加わった。一方、第3班は民間人の退避支援に回り、南西方向の敵部隊に備える。

 零次たち北側防衛組は砦の北門内まで後退し、射撃体勢を整える。両脇に16式機動戦闘車2両がスタンバイし105ミリライフル砲を敵に向けた。


 「将、対戦車火器をあるだけ用意しろ!」


 「応よ!」


 涼の指示を受け、中村将三等陸曹は01式軽対戦車誘導弾を持てるだけ高機動車から運んできた。予備弾込みの総重量35キロを軽々持ち上げる大柄の男は、体格に見合わない手早さで01式を用意すると、ハイドラ70の射撃で伐採された森の奥に見えてきた敵戦車に照準を合わせる。


 「てぇっ!」


 ミサイルは一度上昇すると、先頭にいた戦車の頭上から降り注ぐ。どの戦車も、大抵は上面装甲が弱い。

 戦車が炎上すると、MCVも射撃を開始する。


 「将、一番奥の敵装甲車に照準を合わせろ!」


 双眼鏡を覗き込んでいた零次は、急に指示を出す。


 「戦車が最優先じゃないのか?」


 「いいから撃て!」


 「了解!」


 将は追求すること無く照準を合わせ、最後衛の装甲車にミサイルを打ち込んだ。

 成形炸薬弾が装甲を食い破り、装甲車が破壊されると、戦車の乗員や周辺の歩兵が慌ただしくなる様子が確認できた。


 「やっぱり…」


 「零次、どういうことだ?」


 「…CVM-10、敵の指揮車?」


 「装輪装甲車だったから、もしかしてって思ったんだよな…翼!頭を出している戦車兵を撃て!たぶん戦車長だ!」


 「了解!」


 翼はMCVの上に登ると狙撃を開始した。同時に、新たな敵影を確認した。


 「警告!前方からサンダーウルフ接近!数6!続いてルビウルフ8、ハウンドドッグ4、ネメシス4、歩兵10」


 「10万ボルトを撃ってくるやつかよ…照準変更!サンダーウルフに砲火を集中させろ!」


 10メートル級狼型”サンダーウルフ”は、電撃を放つ独特な砲撃魔術を使用する魔物で、10式戦車でも直撃すれば良くて電子系統の全滅、悪ければ燃料タンクへの引火と言う、かなり危険性の高い敵だ。


 「距離100を切ったら、接近戦で対処する!小銃手前!」


 「将、パンツァーファウスト借りるよ」


 詩織は110ミリ携帯対戦車弾を担ぐと、距離300メートルまで迫ったサンダーウルフの1体に向けた。

 

 「あれが最後のサンダーウルフ?」


 「みたいだな…てぇっ!」


 詩織が無反動砲を撃つと、零次たちが散開する魔物と歩兵に攻撃を開始する。


 「零次!気をつけろ!戦車が迫っている!連中、人間相手に戦車砲を撃つ気まんまんだ!」


 「わかっている!」


 涼の警告に返しながら、零次は術式を展開。スピナーの術式兵装をハウンドドッグに向けて投射する。額から直撃を受けた狼は派手に転がり、その後ろから敵歩兵がライフルを連射してくる。だが、零次は横に飛びながら89式を撃ち返した。同時に、詩織がガトリングガンのような術式兵装を展開させ、制圧射撃を開始する。

 弾幕を掻い潜った10メートル級狼型”ルビウルフ”が零次に飛びかかる。彼は背後に飛び、木に捕まると、その木に突進してきたルビウルフの背中に飛び乗る。そして、長刀を展開して首のを後ろに突き刺した。ルビウルフは零次を振り落とそうと必死だが、零次はHG18ハンドグレネードの安全ピンを抜いて傷口に押し込んだ。彼が飛び退くと同時に、時限信管で爆発しルビウルフは首から粉砕した。


 「零次!」


 「ッチ!」


 詩織の叫びに前方を見ると、105ミリ砲と対戦車弾を突破したストライダー戦車が迫っていた。135ミリ戦車砲を彼らに向けた時、タクトがジャベリンの術式兵装を展開させて投げた。鈍色のジャベリンは見事砲口に突き刺さり、砲を使えなくする。


 「狩人のほうが向いているんじゃないか?」


 「やかましい!」


 「2人共、無駄話は後にしてください!」


 翼が走ってくると、バレットを戦車の補助兵装に向けて撃ち、戦闘力を奪う。彼女を戦車の陰から撃とうと、狙撃手が銃を構えたが、それよりも先に奈々に狙撃される。


 「どうするの?レインさんたちが、左翼からタイラントと歩兵を抑えている」


 敵歩兵を狙撃しながら奈々は兄を尋ねた。


 〈こちらハンマー小隊!アルタイルリーダー、敵戦車位置を知らせろ!〉


 〈こちらスレッジリーダー!スレイプニル小隊と共に到着中!〉


 「スレイプニルは1個班をこっちに!残りとスレッジは、南部の戦闘に!ガンソード!敵戦車の位置をハンマーに!後退する!」


 〈こちら980飛行隊”マスタングリーダー”!近接航空支援を実施する!南部の敵部隊を一掃する!〉


 「了解、マスタング!」


 合流した3小隊は砦内に進入し、スレイプニル小隊とスレッジ小隊は民間人の退避支援に回り、ハンマー小隊は中距離多目的誘導弾を南部の敵戦車に向けた。

 

 〈ハンマー小隊、射撃開始!〉


 〈マスタングリーダー、ミサイル着弾後空爆を実施する!〉


 「ガンソード、こっちの退避を支援しろ!」


 中距離多目的誘導弾が敵の対空車両に命中し、直後マスタング隊のF-35が2000ポンド爆弾を投下する。それでもしぶとく生き残った目標に、10式戦車が射撃を開始し、一方で零次たちはアパッチの支援を受けながら後退する。


 「マスタングリーダー!部隊通過後、橋を爆撃しろ!」


 〈了解!〉


 マスタングリーダーこと、神児遊助三等空佐は、零次がとっさのことで敬語を使うのを忘れていたのに気づいていたが、特に気にすること無く返事をした。


 「殿は俺が務める!行け!」


 零次は最後衛に立ち、橋を渡る民間人や味方部隊を支援する。

 詩織と一緒に。


 「…俺がやるって言ったのに」


 「…俺たちって言わなかった?」


 「言ってない」


 「そう?」


 冗談を言い合いながら、砦内に侵入してきた的に射撃を浴びせる2人は、味方を守りながら後退するMCVが橋を渡り切るのを確認すると、反転して橋の上を走った。敵味方が射撃を行うので、2人は弾丸の雨の中を走ることになる。


 「橋梁爆破!」


 〈LJDAM投下!〉


 爆弾は橋を渡ろうとした敵ごと、その橋を跡形もなく吹き飛ばした。




 「てぇっ!」


 第1班所属の水島リクト三等陸曹は、追撃しようとしてきたワイバーンに向けて個人携帯地対空誘導弾SAM-2Cを発射した。赤外線画像誘導弾は、迷うこと無くワイバーンに命中し、敵残存兵力最後の航空兵力を無力化する。

 民間人と国境警備隊は既にスレイプニル小隊の護衛の元、戦域を離脱したが、零次たちはまだ仕事が残っている。対岸の部隊はまだ引く気配がなく、生き残ったFVM-10装甲車の99式76ミリ光学砲をこちらに向けている。こちらも、スレッジの10式戦車とガンソードのアパッチが睨みを効かせている。

 一方、零次たちは南西方向から出現した敵部隊、その瓦礫とし屍の山を捜索してた。残敵の始末と情報収集だ。


 「ついでに使える武器を回収」


 「零次、これ」


 「これは…見たこと無い形式の戦車だな」


 零次と詩織は、丸みを帯びて74式戦車にも似たストライダーとは違い、10式戦車に似た角ばったフォルムをしている戦車の残骸を見つけた。車体後部の上面装甲、特にエンジンラジエーターのパネルの破損が激しいことから、ヘルファイアか中距離多目的誘導弾の直撃を受けたようだ。魔装砲は外部電源を必要とし、一応電源無しでも撃てるものもあるが性能は大幅に低下する。少なくとも、エンジンを破壊されたこの戦車の兵器は使いものにならない。


 「詩織、援護射撃用意」


 「了解」


 詩織が89式を構え、零次はハッチを開けてFiveseveNを向けた。だが中に戦車兵は見当たらない。どうやら逃げ出したようだ。


 「ベトロニクスが破壊されているな…」


 「敵の機密処理?」


 「多分な…”EngineIgnition”か…」


 零次はイグニッションスイッチを押し込んでみるが、電子系統が作動する様子もない。


 「やっぱだめか…」


 「零次、砲塔の後ろにプレートがあった…TM-18オルレアンだって」


 「新型戦車か…」


 零次は一通り車内の写真を撮ると、戦車から出た。


 〈こちらマスタングリーダー。敵残存兵力、撤退を開始した〉


 「了解」


 〈撤回を確認したらこちらも帰投する。燃料が大分減ってきた〉


 「了解。支援感謝する」


 〈こちらアルタイル2リーダー、零次、ちょっと来てくれ〉


 涼の呼びだされて向かってみると、崖に大きな穴が開いていた。


 「なんだこれ?」


 「多分、古い鉱山の坑道入口だと思います」


 「エステル、この辺りはこういった坑道は多いのか?」


 「聞いた話では、山脈の地下ほぼ全域に坑道が通じているそうで、戦前は山脈を貫く鉄道トンネルの計画もあったそうです」


 「となると、敵はこのトンネルを利用してきたのか」


 「事前探知が出来なかったわけだね」


 「ガンソード、今からマーカースモークを焚くから、そのやや上側を攻撃。鉱口を封鎖しろ」


 〈ガンソード01、了解。退避完了後、連絡を〉


 「了解。総員退避!」


 零次は発煙筒を置いて退避する。退避を確認したアパッチが、鉱口上部に30ミリ砲を撃ちこみ、さらにハイドラ70を撃ちこんで落盤させた。


 「落盤を確認した」


 〈こちらスレッジリーダー。敵部隊の撤退を確認。こちらも撤収していいんじゃないか?〉


 「了解。アルタイル総員、移動する。レジスタンスを高機動車に収容しろ」


 既に時刻はお昼近くになっていた。

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