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きみのためにできること。

作者: 羽根

ここは、動物と虫たちが、仲良く暮らしている森。


ある日、一匹のねずみが、森の奥で遊んでいると、いつの間にか、辺りは真っ暗になっていました。

どっちから来たのか、どっちに行けば帰れるのか、わからなくなり、ねずみは、怖くて泣き出してしまった。 すると

「どうして泣いているの?」

ねずみの前に、一匹のホタルが現れた。

「こんなに、真っ暗じゃ お家に帰れない」

ねずみが言うと、

「じゃあ!ボクについてきて」

ホタルは、ねずみの周りをぐるりと回り、暗闇の方へと飛んで行こうとした。すると、ねずみは

「待って!こんなに暗いところじゃ、小さなキミを見つけられないよ」

と、泣きそうな声でホタルを呼び止めた。

ホタルは、

「大丈夫!暗くても、ボクが見えるから」

と、暗闇の方へと消えて行った。

ねずみが、ホタルの飛んで行った方をジッと見ると、小さな明かりが暗闇に一つポッと浮いていた。

「ホタルくん?」

ねずみは、急いでその明かりへと走った、明かりの主は、やっぱりホタルだった。

「ほら、ボクを見つけられたでしょ」

「うん。ホタルくんのおしり 光るんだね これなら、ぼくでも、ホタルくんについて行ける!」

ねずみは、小さな明かりを頼りに走り、気がつくと、見慣れたドアの前に。

「ぼくのお家だ!帰れたんだ ホタルくんありがとう。」

この日から、ねずみとホタルは、大の仲良しになり、毎日 一緒に遊びました。


ある日、いつもの様にねずみが川岸にあるホタルの家に行ってみると、ホタルがシクシク泣いていた。

「ホタルくんどうしたの?どうして泣いているの?」

ねずみは、びっくりしてホタルに聞いた。するとホタルは、泣きながら答えた。

「ボクのおしり、もう光らなくなってしまったんだ。体も重いし、きっとボクは死んでしまうんだ」

話終わるとホタルは、またワーッと泣き出してしまった。

「大丈夫!もう泣かないで、今度はぼくがキミを助けるから!」

ねずみは、そう言うと、森へと走った。

「どうしたらいいんだろう?ぼくに何ができるだろう?」

そう考えながら走っていると、いつの間にか、夜になっていた。ねずみがふと、空を見上げると、星がキラキラ光っていた。

「あれだ!あれをホタルくんのおしりにくっつけたら、ホタルくんはまた元気になるかもしれない!」

ねずみは、手を伸ばしてみたが、星には届きません。

「やっぱり、ダメか…そうだ!」

ねずみは、うさぎのところへ行きました。

「ホタルくんが大変なんだ!どうしても、あの星を取りたいの!うさぎさんのその長い耳に登らせてくれたらきっとあの星に届くと思うんだ」

ねずみは空にピンと伸びたうさぎの耳に登り手を伸ばしてみたがやっぱり届きません。

次に、ねずみは、ぞうのところへ、行きました。

「ホタルくんが大変なんだ!どうしても、あの星を取りたいの!ぞうさんの長い鼻に乗せてくれたらきっとあの星に届くと思うんだ」

ねずみは空にむかいピンと伸ばしてくれたぞうの鼻先に乗り手を伸ばしてみたがやっぱり届きません。

次に、ねずみは、きりんのところに行きました。

「ホタルくんが大変なんだ!どうしても、あの星を取りたいの!きりんさんの長い首を登らせてくれたらきっとあの星に届くと思うんだ」

ねずみは空にピンと伸びたきりんの首に登り手を伸ばしてみたがやっぱり届きません。

次に、ねずみは、さるのところに行きました。

「ホタルくんが大変なんだ!どうしても、あの星を取りたいの!さるさんがぼくをあの高い木の上に連れて行ってくれたらきっとあの星に届くと思うんだ」

ねずみは、さるの背中につかまり、空にピンと伸びた高い木の上で手を伸ばしてみたがやっぱり届きません。

次に、ねずみは、鳥のところに行きました。

「ホタルくんが大変なんだ!どうしても、あの星を取りたいの!鳥さんが、ぼくを乗せて空まで飛んでくれたらきっとあの星に届くと思うんだ」

ねずみは、鳥の背中に乗り空の上で手を伸ばしてみたがやっぱり届きません。

とうとう朝になってしまいました。ねずみは、がっかりして、ホタルの家に行きました。

「ホタルくん大丈夫?」

「…。」

返事がありせん。ねずみが、家を覗いてみると、ホタルが部屋の隅で倒れていた。

「ホタルくん!ホタルくん!」

ねずみは、何度も何度も、ホタルの体を揺すってみたが、ホタルはピクリとも動きません。

「ホタルくんごめんね。ごめんね。ぼくが助けてあげるって言ったのに…。」

ねずみは、ホタルを、草をしきつめたベッドに寝かせてあげると、急いで、森一番 物知りのゴリラのところに行った。

「本当にホタルくんは死んでしまったの?もう、会えないの?」

ゴリラは、少し困った様に、うなづいて、

「ホタルは、今のわしらには、行く事ができない遠いところに行ってしまったから、もう、会う事はできない…」と答えた。すると、ねずみは

「ぼくのせいだ!ぼくが星を取ってこれなかったから、ホタルくんは、死んでしまったんだ!ぼくのせいだ!」

とワンワン泣きだした。そんなねずみに、ゴリラは、首を横に振り

「そうじゃない!お前のせいではないんだよ」

と、小さなねずみの肩に手をおき 話を続けた、

「もうすぐ、夏が終わる。それと同時にホタルの命も終わるのだよ。ホタルは冬を越せない、長くは生きられないんだ。だから、お前のせいではないのだよ。」

ゴリラはねずみにもわかる様ゆっくりと言って聞かせた。


『命があるものは、いつか必ず終わりがくる。』


という事を…。

「ぼくは、ホタルくんのために何もしてあげられなかった」と、泣きじゃくるねずみにゴリラは

「ホタルは、ちゃんとわかっておる。お前が自分の為に、一生懸命になってくれた事を。きっと、ホタルは嬉しかったと思うぞ。」

と、笑って見せた。

ゴリラの話をジッと聞いていたねずみは、ゴリラの膝に小さな手を置き訪ねた。

「遠いところってどこなの?ぼくは、もう、ホタルくんのために何もしてあげられないの?」

ゴリラは少し考え

「そうだなー、ホタルは、お前が取ろうとした、あの星になったのかもしれんなー。お前がホタルのためにできる事は、これからも、ずっとホタルと友達でいる事だ。ホタルは、空から、お前を見ていてくれるだろう。」

その言葉を聞いたねずみは、急に外へと、飛び出し、夜の真っ暗な空を見上げた。

「どの星がホタルくんだろう?あの一番ピカピカ光っているのがホタルくんかな?おーい!ぼくは、ここだよー!ぼく、ホタルくんの事、絶対に忘れないからね。ずっとずっと友達だからね!」

そんな、ねずみの姿を部屋の窓から、ゴリラが優しく見守っていた。


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