武田の滅亡
近江の海 安土城 黒田官兵衛
元親殿が来て、話をしている。
『武田を屈服させる前に、北条の忍び集団、風魔を取り込めないか』と。
私は『一考の余地がある』
元親殿は『日の本が統一されたら、伊賀、甲賀、根来、戸隠などの忍び達を使い、情報収集、統括、分析する場所を作る。
彼らは余りに恵まれていない。
彼らを生かせる場所と環境を作る。』
私は『頭領達を武将。下に着く者は武士階級にせよというのだな』
元親殿は頷いた。
上様に相談してみたら、『悪くはない、戦う前の情報収集や準備に入るから、その間に風魔を調略してみよう。』
風魔を調略する許可を出してくれた。
相模の国 風魔の里 風魔小太郎
織田からの誘いがきた。
早雲玄瑞に従い、関東に入った当初は、優遇し、何かと骨を折ってくれたが、代替わりする度、我々を見下す者が増えた。
他国の忍びである伊賀や甲賀などは武将、武士として厚遇され、一城を任される者もいるらしい。
このまま、北条のために尽くしても、報われぬ、織田を頼るか。
幻庵殿や地黄八幡殿、成田氏長殿など、優れた人材は、我々を気にかけてくれたが。
悶々と悩む日々が続いたと言う。
官兵衛が裏で離間を図るのだが、当初は幻庵や地黄八幡らが、織田の調略であるため、氏政らを諌めていたが、武田攻めの中盤頃には、二人が亡くなり、風魔を庇う者がいなくなった。
小太郎は北条を見限り、織田の誘いを受けた。
第六天魔王は約束どおり、厚遇したと言う。
因幡の国 鳥取城 三村 秀親
武田攻めか。
物量で押せば、簡単に終わるが、窮鼠と化してくると厄介だ。
中山道からの侵攻となる。
先陣は柴田様と我々だ。
この間、父が連れて行く将と、留守居の将を配分していた。
兵は八千、火縄は一万丁、揃えると言う。
硝石や火薬なども準備出来ている。
毛利からは今回は元春様、隆景様は留守居。
輝元様が総大将。
副将は元清様。
元長様、秀包様、秀元らを指揮し、二万の兵らしい。
長宗我部も一万五千。
司令官は信親と言うから、会えるのが楽しみだ。
しかし、初と過ごせないのが、残念だ。
初『どうされましたか?』
私『しばらくしたら、遠征ゆえ、留守居を頼む。
ゆっくり過ごせれると思ったが。
困ったことが内外に起こったら内は正純、外は勝成に相談せよ。』
初は頷き、『そういえば、この間、献上されたのは』
私は『因州和紙だ。父が考案した。
偶に備中和紙との品定めを行う。
競争をさせている。
結構面白い。』
初は興味深そうにしている。
『そういえば、竜子様いえ、義母がなにやら作っていると』
私『ああ、あれか。
まあ、趣味とも暇つぶしとも言う。
冬になれば、領地の民百姓の家では女性達が行うようになった。
まだまだ、実験段階だ。
売りに出せる物ではない』
初は『試してみてもよろしいでしょうか?』
私は頷き、『ほどほどにな』と言って許可した。
しばらくして、見事な織物を作って朝廷に献上されたと言う。
五カ月後、安土に西国の諸大名の軍が集まり、武田攻めが始まった。
信濃の国 木曽福島城 三村 元親
山奥と言っていい、前に岩村城や苗木城などを見たが、やはり要害だわ。
柴田が入り、武田の侵攻は難しくなった。
逆侵攻して、南信濃を得た。
武田は何度か、侵攻したが、撤退した。
小競り合いだったが、西が収まり、軍が東進したため、攻勢となった。
柴田は火のような攻勢をかけた。
武田勢は最初から士気が上がらず、ぶつかると砕け散り、武田信豊らは衆寡敵せず、戦死した。
あっという間に諏訪、上原城、高遠城を陥落させ、甲斐に侵入した。
駿河方面も狸の攻勢と武田の一族の穴山、小山田らがあっさり降伏し、追い詰められた勝頼は恵林寺で自害した。
生き延びた者は真田や上杉を密かに頼り、血脈を保ったという。
甲斐の国 躑躅ヶ崎館 第六天魔王
甲斐の虎の住処を得た。
勝頼は恵林寺で自害したらしい。
次は北条だが、どうやら官兵衛と元親らが、風魔を誘降させたようだ。
しかし、問題がある。
補給だ。
武田を滅ぼすだけの兵糧しかない。
小田原は難攻不落、勢いだけでは無理だろう。
一応、出直すとしようか。
勝家や信孝は北条をこの勢いでと言っていたが、武田は往年の力がないため、つぶれた。
北条は違う。
元親や毛利、長宗我部、浅井、上杉、狸は反対している。
補給面の不安と難攻不落の小田原城となれば、危険だ。
儂は一応、甲斐に佐々、不破、金森、南信濃に権六、
美濃に信孝を入れ、越中には犬を入れた。
但馬には勝長を入れる旨を伝えた。
駿河には武田の降将達を、北信濃には真田に任せることにした。
帰り道、元親を呼び、『また、先陣を頼む、
罰になってないから』と。
元親『風魔が降ったのは幸先が良い、彼らから情報収集と調略を仕掛けれるかと』
儂も頷き、『降伏してきたら良いがな』
元親も頷いた。
甲斐にかなりの軍を残し、近江にひきあげた。
元親は近江に残り、事後処理を終え、備中に引き揚げた。