博識の披露
呼びに来た人物は伯父の三村親成だった。
長く6歳の子を捜していたようだったのでとりあえず謝っておこう。
一緒に帰る途中でそれとなく尋ねてみた。
「伯父上、三村の領地ってどのくらいあるの」
「あまり大きくないが」
「そうなの、結構、山の資源とかあるから広いのかなと、この辺りそれに変わった匂いもするし、毎日」
「銅を掘って精製しているからな。興味あるのか?」
俺は頷いた。
親成が「精製は上手く出来にくいから、大変だ。」
俺は聞きながら尋ねてみた。
「掘り方を変えてみたらどうかな。一年間、出来るだけ掘り、一年間精製、一年間銅を使った物を作り、売っていくって方法ってどう」
親成はその言葉を聞いて目を見張った。
俺はさらに「毛利は大国で付き合いがあるからさ。技師などを貸してもらうことと販路を作って」
親成は更に驚いていた。
「帰って話を詳しく聞こうか」
屋敷に戻って、親成は続きを促した。
「火縄についてだけど、火薬や弾が高いのは分かる。
作れると思う。火薬の成分は民家の厠や馬小屋の糞を水で溶かして煮沸して醸成してから取る、これ毛利の大御所がよく集めているって、おそらく明国からの方法を教えて貰ってやってみたんだろう」
親成「そうか、大内氏を滅ぼした結果によるものか。火縄、あれは一回しか使えないが」
「火縄を増やせば良いよ。そのためにうちの領内にあるものを加工して、売る、そして火縄を得る。一回しか使えないから役に立たないという解釈は間違ってる、それは数が少ないから、弾を込めて撃つまでの時間がかかるからだよ。三千丁くらいの数と火縄に慣れた兵を訓練させる。三千丁の火縄を持った兵を3つに分け、最初の千が撃ち、後ろの2列は弾込めをしておく。最初の千が撃ち終わったら次の二番目が撃つ、その間に最初に撃った者は銃身を冷やし、弾を込める。あとはその回転だよ」
ますます親成は驚き、溜息をついた。
「驚いた。どこで」
「前に火縄について話をしていて、あまり役に立たないとか誰かが言ってたのを自分なりに考えてみただけだよ」
親成は途轍もない考えを聴いて驚いた。
さらに俺は質問した。「伯父上、百姓からの年貢はどれほど取り立ているの」
親成「半分だが」
俺は「取り立てを半分から三つから四つに変更した方が良いよ。
百姓達には五つから六つにするの。年貢を軽くすると百姓は喜ぶし、我が家に尽くしてくれると思う。
最後の一つは豆や麦、粟、ヒエ、蕎麦と言ったものを植えるようにする、飢饉や伝染病、天変地異が起こっても百姓達を助けるためのものを作る、それは我が家が管理する」
親成は6歳の俺の考えに驚いていた。
俺は「銅を上手く利用するために毛利から職人を借りる。毛利を上手く利用するんだ。まあ、大御所がいるから見破られるのは間違いないけど」
親成「明日から厠や馬小屋の糞を使って作ってみてくれ。」
明日、硝石を作るように頼んできた。
俺は頷き、伯父の部屋を辞した。
親成は兄の子の博識ぶりに嘆息し、一言呟いた。『恐ろしいくらいの博識だし、智謀だ。生き残るためには毛利を利用するか。全てにおいて利用、利用されることも念頭に置けということなのだろうな』と。
夜が静かにふけていった。