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生き残り兵乱記  作者: 遥か大地に
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宇喜多の後継決定と

備前の国 岡山城 犬


宇喜多の始末と言うか、後継問題のかたがついたな。

まあ、あり得ない終わり方だ。

本来なら、安土での八郎殿の教育の筈だが、

備中守にお預けか。

隣に座る猿が、既に灰になっている。

まあ、ああも私生活やつまらぬ企みを暴かれたら、どうにもならぬ、猿、子がいないのは分かるが、これに懲りて、女漁りは控えるのだな。


寧々殿ほど出来た女性はおらぬのに。

勿体無いことを知らぬ、ここにいる者達は正室一人、まあ、元親殿の所は継室だが


それにしても、宇喜多の家臣達も不満はあるだろうが、仕方ない、逆らえば、上様に潰されるから黙っていなければならない。


忠家殿はともかく、お福殿は呆然としている、致し方ない。

そもそも、宇喜多和泉守殿が亡くなり、遺言を残し損ねたゆえだ。


忠家殿は信用できる、和泉守殿はあまりに、謀才がありすぎ、周りの警戒を呼んだ。

儂らもだが、元親殿などは過剰な警戒を抱いたほどだ。

八郎殿の教育を元親殿に任せるか、羨ましい、あれがやるのは、国主としての心構えや如何に民を飢えさせないようにするかだ。

産業開発のイロハもだ。

儂の息子、利長や利政に教えてやって欲しいくらいだ。

上様に要請してみよう、いや募ろうか。

募れば、織田や毛利、長宗我部の若い武将達の一個連隊は編成されるだろう。



同上 三村元親



明智日向守より備前に呼び出された。

どうやら謀略家の後釜を決めらしい。

そして、結果を知って、愕然とした。

謀略家の子の引き取りだと、しかも教育係。

俺は国主であって、学校の先生ではない。

やっとあの宇喜多和泉守直家のプレッシャーから開放され、さっさと隠居して、秀親に後を譲り、後見し、竜子とゆっくり過ごしたり、趣味の産業開発や身分を問わない学校を作ろうと考えていたのに。

あの第六天魔王は人生の楽しみの邪魔をしおったわ。

そして、私は何処までも、宇喜多に祟られるのか。

苦々しい思いしかしなかった。



同上 宇喜多忠家



織田様の裁定により、私が宇喜多家の主となった。

別に私としては、八郎殿の補佐役でも構わなかったし、教育係でも。

だが、私が表に出ようが、出なくても変わらない、私が裁量すると言われたら。

どうにもならぬ、八郎殿では軽く見られる。

お福殿は呆然として、思考がついて行ってない。

羽柴殿は、利用しようと考えていたらしいが、上様に見破られてしまい、真っ白になっている。

しかし、お福殿と八郎殿を備中にか。

隣国ゆえ、また、宇喜多と三村の争いは大小、合わせても、かなりだ。

特に、元親殿の父、家親殿を当家の家臣、花房正幸が射殺したことや兄が備中や西美作を欲したこともあり、激突が必至だった。

私も戦ったが、元親殿の無理のない用兵に撤退せざるを得なかった。

兄との戦いは、殆ど引き分けが多かった。

内政も素晴らしい。

領する石高はほぼ同じ。

火縄の数は西国一の保有数、迂闊に戦えない。

それに、宇喜多との国境は備中高松城など、

要塞化しているため、備中への侵入は難しく、内応を策しても見破られたり、逆に調略をされることもあった。

優秀な人材も多く、羨ましいという思いもあった。

最近では毛利、織田、長宗我部の若い武将が彼に内政や産業開発について教えて欲しいと言う者が多い。

だからこそ、前田殿が羨ましいと言ったのだ。これから、戦乱の世が収まれば、内政に優れた武将が重要になるのは分かるのだが。

戸川秀安が、隠居して、達安に家督を譲り、八郎様やお福殿が不安を感じぬよう、着いていこう。

織田様に逆らうことは出来ぬが、これくらいは許して貰えないかと明智日向守殿に言っている。

彼は頷いた。

元親殿は明智殿に兵を連れて来ているかを尋ねていた。

『備中松山城まで向かうようにも言われている。』と。

元親『なるほど、そこまで準備が出来ているのか、しかも備中に送れるように。なら後は、お福殿の説得は日向守に任せるとしよう。

私の役目ではない。これは、宇喜多家家中と織田の問題で私には関係ないこと』

流石の日向守もグッと詰まった。

元親殿は二人の家臣と共に、別室へ出て行った。

前田殿が『日向守、あれの言う通り、我々が説得せねばなるまい。

あれがいると、纏まらないからの』

光秀は溜息をついた。

猿は使い物にならないし、前田もひとごとのようだ。

官兵衛は、黙っている。

家臣達は話し合いを続けている



同上 お福



織田の裁定には正直、私にとって失望を感じざるを得ない、何故とも言う。

羽柴殿に八郎の後見をして貰い、織田の家中での地位を上げるのが、私の目論見だった。

だが、忠家殿が国主となり、私の目論見どころか、羽柴殿の立場が可笑しくなってしまった。

そのため、不安を感じた。

それに八郎を預けるのが、あろうことか宇喜多としのぎを削って、争った三村元親殿と言う。

これでは何のために我が身を羽柴殿に捧げたか分からなくなった。

夫、宇喜多直家がどれほど、この三村元親殿相手に苦労したか。

かの人物のおかげで、備前と東美作しか得られず、苦戦に追いやられた。

隣国の国主として、内政や産業開発の分野では噂半分どころか、噂以上で、あの織田や毛利が高く評価している。

何とか備中を得ようとしたが、夫は何とかしようにも、逆に調略をかけられる始末だった。

小競り合いが多く、最終的に手出し出来なかった。

そんな中、夫は亡くなった。

不満と不安の中、明智日向守殿から裁定を聞き、前田、羽柴、宇喜多家の家臣達や忠家殿、私、そしてもう一席儲けられた席に三村備中守元親殿が座られた。

最初は何故と思ったが、結果を知りたいためだったようだ。

八郎を預けるには、下心のある羽柴よりは・・・。




別室 島左近



宇喜多の家督相続、八郎殿が継ぐと思ったが、忠家殿が継ぐと言う。

織田様が言うこともわからないではないが、

納得出来るかどうかだ。

殿は眼を閉じている、何も話そうとはしない。

考えることが多いのだろう。

殿ことゆえ、頼まれたら嫌とは言えぬ性格だから、いやいや引き受けるのだろう。



暫くして犬がやってきて、日向守の軍とともにお福殿と八郎殿の身を備中へと言う。

説得したは良いが、俺は帰路、暗澹たる思いに囚われざるを得なかった。





































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