妻の死と軍神対策
備中の国 備中松山城 三村元親
内政の充実度も増し、平穏無事になった。
毛利の内政の面倒を見たが、後は娘の長宗我部への輿入れの時期を考えなければならないだろう。
気になるのは妻の身体の状態だ。
三年前に、毛利の内政の面倒を見ていた時に、一人、一年前にも一人産んだが、産後の状態が良くない。
精神的なものもあるため、俺としては輿入れをズラすしかないのだが、長宗我部への輿入れが決まっていた娘が母に代わって幼い兄妹の世話を見ている。
織田の勢力は更に伸び、朝倉氏も既に潰れ、浅井氏が越前に入り、越前、北近江、若狭を得ている。
越後の軍神がどう出るかだろう。
毛利は九州、門司城を死守しながら、筑前や豊前に侵攻している。
左近や全登、高虎らに命じて、援軍を出している。
それより、妻にもしものことがあれば、考えなければならないことがある。
毛利との繋がりが、薄くなる可能性がある。
小早川様や吉川様、隆家様に相談する必要があるだろう。
長門の国 吉川元春
元親からの書状を隆景と見ている。
『姪の身体が悪いと言う。元親との間に子を成したが、産後の状態か。
なるほど、危機感を感じているらしい。』
隆景は儂の顔色をみている。
儂は頷き、『姪が亡くなろうが、あれの子は毛利の血を引いている。繋がりが薄くはならないだろう。それに儂等としては元親との繋がりを断たれる訳にはいかぬ』
隆景『確かに、元親としては確約して欲しかったのだろうな。
亡くなった時は継室や側室を娶りやすくしよう、父上もそうだったから」
儂は『回復すれば良いが、あれの娘を一族へ娶せるようにしておこう。亡くなった場合、継室は好きに娶ってよいようにと』
隆景は頷き、貞俊に書状を送った。
貞俊から元親への書状が着いて、元親はため息をついた。
まあ、可能性だから仕方ないと言える。
美濃の国 岐阜城 第六天魔王
毛利が最近、国力の充実に励んでいるらしい。恐らく元親が主導として動いている。
あれ程の大国ゆえ、何年かしら、結果が出る。
内乱が起こりにくい環境になったからだろう。
産業開発による結果も堺で出回っている。
そう言えば、あれの正室が臥せっていると聞いた。
子を産んだ後の状態が悪いらしい。
あれの息子にも書状が届いたらしい。
心配していたようだ。
儂としては、何もしてやれぬのが、気の毒よ。待て、あれの息子を一時帰還させるか。
第六天魔王はそう決断した。
備中の国 備中松山城 三村元親
毛利の国力が少しずつ上昇の気配がある。
良いことだが、妻の身体の状態が日に日に悪くなっている。
俺はほぼ毎日、見舞っているが、医師の見立てでは長くないと言う。
妻は臥せっていた身体を起こし、座って『長々、お世話になりました。』
俺は『心配ばかりかけてしまった、思えば、
大殿の要請から始まって。』
妻は頭振り、『いえ、楽しい生活でした。
勝法師丸は遠くにいていないのが辛いですが、娘もいずれは長宗我部に嫁ぎます。嫁ぐ姿を見れれば良いのですが、其処まで、持つかは分かりません』
元親『寂しいことを言ってくれるな。嫁ぐのは来年だからな。』
元親は妻が長くないことを悟った。
『第六天魔王に勝法師丸の帰国を頼み、娘の嫁ぐ姿を見せるようにするか』と。
第六天魔王への要請は叶えられ、幽斎と共に、勝法師丸は一時帰還してきた。
俺は勝法師丸の元服を行い、秀親と名乗らせた。
息子の晴れ姿を見た、妻は嬉しそうだった、娘の嫁ぐ衣装を見て、娘は其れを着て、妻に見せていた。
妻は幼い二人の子を抱きしめて『この二人の成長が見られないのが辛い。殿、早く継室を見つけてあげて下さい、この子達には母親は必要ですから、お願いします』
妻はしばらくして、多くの者に看取られて、この世を去った。
同上 三村秀親
母の弔いが済み、しばらく経ったある日、
父は『儂に言うだけ言って逝ってしまった、
しばらくは喪に服して、継室は持たぬが、しばらくしてあれの遺言を果たすつもりだ。』
私は『継室は?』
父は昔、人質に出した時、幽斎殿から預かった女性がいる。近江の守護で衰退した京極家の姫君だ。お前には言っておく。彼女の件はすでに毛利には伝えてあるから大丈夫だ。
私は了承した。
『信長様はどう』
私はしばらく逗留してから戻れと。
父は頷き、『弟が大きくなったら、交代するようにするからな』
私は頷いた。
『美濃はどうだ。武田は衰退し、上杉の侵攻は?。』
私は柴田様が、南信濃へ。それと、柴田様がようやく、妻を娶られた。
父は笑って、一言、遠山の女城主か、と。
武田は揉めているから、暫く侵攻はない。
上杉は今、関東へ行ってから、北陸へ出る。
父は上杉には、気をつけて、戦え。
あれは、政治はからっきしだが、戦争や軍事に限って言えば、天才だ。
それと、車懸かりの陣とあれが指揮する兵は
兵の多寡ではなく、あれの兵の運用の上手さと天才的な勘が上杉軍の強さだ。
先の長篠は通用する相手ではない。と
幽斎様が来て、5日滞在して、美濃に戻ると言う。
父は先程言っていたことを手紙に書き、信長様に渡すようにした。
最後に、信長様も考えているだろうが。とも
逗留して、秀親と幽斎は美濃に向かった。