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生き残り兵乱記  作者: 遥か大地に
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初陣と大殿との出会いと教え

備中の国 鶴首城 三村 元親


俺は少し憂鬱になっている。

初陣が近いからというのもあるが、史実通り行けば恐らく月山富田城に攻めることになるが、あの城、西国でも一、二を争うくらいの難攻不落の城だ。

毛利元就は兵糧攻めにして長い時間をかけて落とした。

吉川元春はその中で吉川本太平記を残している。

だが、不幸もあったな、長男の隆元が死んでいる。

あの死は、毒殺なのか、暗殺なのか、今もってわからない。

和智兄弟が行なうメリットもない。

尼子晴久にも言えるだろう。

あれも同じことが言える、さあ石見銀山取り返して毛利相手に戦うぞと思ったら卒中に倒れた。

ああも、謀略家が多く出た土地柄、怪しいところが満載だが、あまり深く考えない方が良さそうだ。

どツボに嵌るから気をつけておこう。


初陣となり、出雲へ向かっている。

全登は頑張って功を立てようと気合いが入っている。

親父にも言ってみたが、『お手伝いの戦です。我々には何ら益がないから、後ろから見物しましょう』と。

親父には頭を叩かれたが。

もう一つ嫌な予感がしていた。

最前線に立つことを想定しているが、こんな遠方からやってきて兵士達は疲れている。

最前線に立ち、疲れて眠って夜襲を受けたら、最悪だ。

もう一つは尼子は死に物狂いとなって死兵となってかかってくるだろうから被害は更に増すだろう。

特に山中鹿之介が挑みに出て来るだろう。

もう一回親父に忠告しに行ったが、親父もそれに既に気づいていた。

毛利の大殿に着いてから言うことになった。

道中何事もなく、月山富田城を囲んでる毛利の軍に合流し、大御所に来陣を告げた。

大殿は待ち兼ねていたのか、労を労ってくれた。

陣立ては最前線ではなく、3番手くらいのところで疲れを取ってからのようだ。

月山富田城を見ながら、ため息をついた。

長陣は結構きつい。

すぐ落ちることはないため、兵士達の士気が緩まないのように気をつけるだけの日だった。


交代してしばらく経って尼子軍が出てきた。

死兵と化しているため、手強い。相手の先頭に立ってるのは、恐らく山中鹿之介だろうか。巧妙に城から引き離そうとしたが、上手く逃げられてしまった。

尼子との戦いが膠着状態に陥った中、俺は毛利の大御所に対面するように、命じられた。



毛利軍本陣



俺は取り次いでもらい、大殿に会った。

元就は座るように促されてから、座り、俺の眼を見て話しかけた。

「お主に会いとうて呼んだ。

備中の国がお主によって富国の地になっておる。

火縄は二千丁もある。何処と戦うつもりで集めておるのか」

俺は隠しきれぬと雰囲気で感じていた。

「備中の民を守らんがためにて、揃えております。

国力を高めるはそのため、確かに狙うものがおりますが。特に備前には大御所に勝るとも劣らない存在もおります、そしていずれこの地方に兵を差し向けてくるであろう、尾張の織田信長からも」

元就の顔色を変え、「お主もそう思うか。あれは恐ろしい。既存の概念、価値観を破壊しておる。合理的に物事を見る。あれの考えを理解していかないとついて行くのは難しい。

それゆえ、あれとの衝突をできる限り避けてきたが、避けられぬか、やはり天下をのう。元親殿、儂は二人、天下を狙おうとした者をこの目で見てきた。

だが、その先代ほどの器量のない後継者は領土を守れば良いのに、天下を同じく狙い、破滅した、いや破滅しようとしている。

お主が知っての通り大内義興殿、尼子経久殿のことよ。

だから儂は天下を狙うなと息子達に言ってきた。

お主も領土保全を考えてはおるが、隙あれば狙うであろう。

そういう目をしておる。

毛利を狙うか。」

俺に挑戦的に尋ねた。

俺は「毛利とは同盟を結んでいる以上西に向けることはありませぬが、東に向かいますかな。いや、まだありますが」

元就は何処を狙うか、悟った。

「今日は楽しかった。元親殿、備中に帰れば、佳き話があろうよ」

元親は苦笑を浮かべ、陣に戻って行った。

元就はため息をつき、元春と隆景を呼んだ。

二人は何があったか分かり、「如何でしたか」

元就「予想以上だった。

あれは毛利の防壁となろう。

以前、言っていた元親殿と儂の孫娘との縁談を進める。

他家にはとてもやれなくなったわ。

もし近い将来、二人とも織田が攻めてきたら、あれに力を貸してやれ。

穂井田へ元清をやる件も並行して行うよう。それとあれは西には向かわぬ。

備前や美作へ行くことは間違いない。

まだ行く方面がある、東の防壁となるとすれば何処をとるか分かるであろう、伯耆を狙っておるようじゃ。

絶対に敵に回すな、回せばどうなるかわかるな。

遺言として言っておく。」

二人はそれを聞いて頷いた。



俺は、陣に戻りながら考えた。

『やれやれ、眼をつけられたようだな。

とりこまれないように注意しないと大変だ。歴史を変えたようだな。

転生して生き残るからにはそうなると覚悟を決めよう。』

星を見て思った。


それからしばらく、大殿の元にいて、輝元様や元長様と共に司令官としての心構えと用兵、謀略、調略と言った初歩的な物を学んだ。

これは元親の飛躍に繋がることになった。




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