ある日の<俺> 9月7日。 九月の雨の日
九月に入ってから、雨が多い。
ゲリラ豪雨とか呼ばれてるけど、本当にそんな感じだ。
ひとたび降りだせば、たちまち道路の両脇に水が溜まり、通り過ぎる車が大量の水飛沫をはね上げていく。良識のあるドライバーは通行人にも気をつけてくれるけど、そうでないのもいて・・・
黄色い傘の、俺より少し先を歩いていた小学生が、無造作に通り過ぎた車に思いっきり水をぶっ掛けられていた。うわ。
驚いて、次に泣き出した子供に、俺は駆け寄った。
「おじさん・・・」
頭の先から爪先までびしょ濡れになった女の子は、時々塾の送り迎えをする笹野さんちの百合子ちゃんじゃないか。
泣きじゃくる百合子ちゃん。俺は着ていたレインコートの内側ポケットから乾いたスポーツタオルを取り出した。持ってて良かった、雨の日の必需品。ちなみに、ビニール袋も持ってると便利だ。
やさしく顔を拭き、頭も拭ってやると、少し落ち着いたらしく、泣き止んでくれた。ちょうど通り道でもあるし、百合子ちゃんを家まで送り届けることにする。元気になってもらおうと、一緒に雨降りの歌を歌いながら歩いていたら、さっきの無礼な車が止まっているのに出合った。
どうやら、対向車線を走っていた車と接触したらしい。双方、大した被害は無いようだが、相手の車は大きくて真っ黒で、極め付けにスモークグラスを貼ったもので、どう見てもそのスジの人御用達のような車だった。
天網恢恢疎にして漏らさず。
百合子ちゃんの視界に、黒い車から降りてきたおニイさんたちが入らないようにしつつ(子供の教育上、良くなさそうな展開になる可能性大だし)、俺は心の中でそんな諺を呟いていた。
♪ぴっちぴっちちゃっぷちゃっぷランランラン♪