ある日の<俺> 8月16日。 今年のお盆・送り火
今年の夏は特に暑い。
なんてな。毎年そう思ってしまう。けど今年の夏は、去年より確実に過ごしやすい。日々それを実感している。
何しろ、去年までのエアコンは効きの悪い年代物だったけど、今年はぴんぴんの新品だ。俺の甲斐性じゃないけど、盆で帰ってきた父や母、双子の弟は安心してくれただろうか。
屋上で送り火を焚きながら、俺はぼんやりとそんなことを考えていた。
薄く立ち上る白い煙は、すぐにビル風に吹き散らされてしまう。このところ、朝、昼と猛烈に照って、夕方から雷を伴った大雨が降る日が続いている。今日もそろそろ天気が急変するのかもしれない。
今年の盆は、何事もなく過ぎた。去年は色々ありすぎて・・・とてもひと言では言い表せない。どうでもいいけど、刑事だった弟の、同僚だの後輩だの先輩だのから事あるごとに「是非逮捕術の模範演技を!」と頼まれるのが辛い。
だから、あの時の俺は俺じゃなかったんだってば。
そういえば、どこからどう事件のことを聞いたのか、あの後、このボロビルの家主でもある友人からメールが来たっけ。
たったひと言。
『お憑かれさま。』
おい、どういう意味だよ。ううう。
あんたなんか、あんたなんか! そう、<ひまわり荘の変人>のくせに!
「去年は色々ありすぎて・・・とてもひと言では言い表せない。」
この話の前の年に、「<俺>のお盆」という長編を書きました。それをこちらに入れるとまたなんだかややこしいので、『一年で一番長い日』の方に投稿すると思います。