ある日の<俺> 12月29日。誰かの誕生日
今日は妙な依頼があった。
物凄く掠れた声で電話があり、自分の代わりに買い物をしてきて欲しいという。何か犯罪絡みか? と一瞬警戒したが、掠れた声はインフルエンザのせい、買ってきてほしいものはケーキとアルミ缶入りカクテル。全然犯罪じゃない。
良かった。
住所はアルカトラズ・アパート、6号室。俺にインフルエンザを感染しては申しわけないので、代金はドアノブに掛けておくという。
で、ついさっき、依頼者の希望のものを買ってきて、同じようにドアノブに引っ掛けてきたところだ。依頼料は、郵便受けの内側からもらった。
何でも、今日が誕生日らしい。だからケーキか。ケーキにカクテル? うーん。病人は酒なんか飲んじゃイカンような気がするが。
・・・ま、深く考えないようにしておこう。ピークは過ぎた、ということだし。「ここ数日インフルエンザのせいで外に出られず、囚人のような気分です」とドアの内側から聞こえた声は、朝、依頼の電話を受けた時よりマシになっていたような気がする。
「もしまた悪化しそうだったら、依頼料はいりませんから、電話してくださいね」とドア越しに伝えておいた。独り暮らしの病気の心細さは他人事じゃない。
それにしても、「遠くの親戚より近くの他人」というのはよく聞くが、「近くの何でも屋」というのはどうなんだ。・・・寂しい人なんだろうか。
いやいや、詮索するのはよしておこう。
さて、ぬるま湯に塩を少々入れて、うがいでもしておくか。何でも屋は身体が資本。
作者は「PrisonerNo.6」名義で楽天ブログを運営している故に…
今年も、もうすぐこの日が来ます。