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ある日の<俺> 2025年4月23日 疲れた日にはスルメとビール

明日には夏至だというのに、何故四月の話かというと、この日に書き始めたからです…。

白いナガミヒナゲシを見つけたのは本当。

今日も朝から忙しかった。


グレートデンの伝さんとの散歩が終わったら、次はミックス犬のジュリちゃんと散歩。ジュリちゃん、シベリアンハスキーの血が強いらしく、ちょっと怖い顔してる。曲がり角の出合い頭、出勤途中のOLさんと思われる女性に悲鳴を上げられてしまった。ああ、大丈夫だよ、OLさん。ジュリちゃん、こんな顔でもただの人間好きのぽやぽやお坊ちゃんなんです。ほら、ご心配なく、リードも短くきっちりと。この時間は人通りがあるからね。


わんこたちの散歩が終わったら、園田さんちで草むしり。端の方で、白いナガミヒナゲシを発見。ナガミーといえばオレンジしか見たことないから、新種か? とは思ったけど、思うだけで容赦なくむしってやった。特定外来種であるヤツらに情けは無用。


むしり倒して園田さんに喜ばれ、お仕事代とは別にスルメをもらってしまった。お友だちが名産を送ってくれたけど、このごろ硬いのを噛むのが辛くなってきたんだって。歯は大事だよ、としみじみ語ってくださった。──うん、このあいだ瀬川さんもそう言ってた。煎餅食べてたら、歯が欠けたんだって。


そのままもう一軒お得意様宅に伺い、庭の草むしりを──おいコラ、お野良。ぶっといトラジマお野良め。袋の上から嗅ぎつけたか。そのスルメは俺のものだ、やらないぞ。猫がスルメ食べたら腰抜けるって、北村のお婆ちゃんが言ってたぞ! 


昼食はドラッグストアで税抜き九十八円だったのをまとめ買いしたレトルトカレーと、昨夜の残りのお惣菜チキンカツでカツカレーとしゃれ込み、デザートにバナナを。


午後からは駅前でチラシ配りをし、その後は買い物代行。お隣同士の二軒分だから、トイレットペーパー嵩張った。


スーパーで買った間食のアンパンとメロンパンで英気を養い、牛乳も飲み。


夕方は小学生の塾送り迎え、合い間に夕方の犬散歩。授業三時間あるんだって。伝さん、ちょっと遠回りしよっか。


伝さん送り届けて、小学生も送り届けて、帰宅して。


はー、やれやれ、とコンクリート床に設置したなんちゃって畳の間にへたり込んだら、手に何か……。ん? カサカサと乾いた感触、ツヤのない黒っぽいフォルム。脚が放射状に突き出して──。


蜘蛛?


「わっ!」


よく見たら、ミニトマトのヘタだった。朝食べたときに落としたのか……。


「……」


伝さんとのハードな犬散歩より、しゃがんだまま長時間の草むしりより。チラシ配りより何より、こんなしょーもない見間違いに、今日一番疲れた。蜘蛛なんか別に怖くないけどさあ……。


好んで触りたくもないんだよ、と溜息ついてふと目を上げると、じっとこちらを見る目。居候の三毛猫だ。


「……」


香箱を組んだまま、欠伸をひとつ。


「……」


にゃんとも鳴かず、何事もなかったみたいに居眠りを再開。


「……」


その間は何だよ! 俺、ギャグがスベッた芸人みたいじゃないか!


ええい、金曜に飲もうと思ってたビール、今飲んでやる。そんでスルメあぶるんだ。へーんだ、お前には匂いだけだぞ、三毛猫め!

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□■□ 逃げる太陽シリーズ □■□
あっちの<俺>もそっちの<俺>も、<俺>はいつでも同じ<俺>。
『一年で一番長い日』本編。完結済み。関連続編有り。
『古美術雑貨取扱店 慈恩堂奇譚』古道具屋、慈恩堂がらみの、ちょっと不思議なお話。
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