ある日の<俺> 2022年8月31日 地獄草に思う
もう九月も下旬に入りましたが…。
もう明日から九月かぁ、なんて思いながら、仕事の段取りを考えつつ自転車を押して歩いていると、驚きの光景に出会った。
「えっ!」
思わず声が上がる。だって、そこは不毛の大地のはずだったんだ。大地ってか、ついこのあいだ俺が草刈ったばかりの空き地。ちょっと前にも通りかかったけど、刈られた草はすっかり萎びて枯れ果てていて、俺は密かに自分の仕事に満足していた。
というのに。
力なく折り重なった一面の枯れ草を貫いて、超ミニチュアの樅の木のような鮮やかな緑が点々と顔を出している。
スギナだ。スギナの野郎だよ! ライバルたちが復活する前に、自分たちだけでこの地を支配せんと、いち早く萌え出てきたんだ。その様子は、まるで遠目に見たアフリカのサバンナ。テレビでしか見たことないけど、乾季のサバンナって、茶色と飛び飛びの緑で出来てるような気がする。
凄いな、スギナ。さすが地獄草。
地下茎が寸断されても、しつこく再生するだけのことはある。
「……」
生命の神秘というか、植物の逞しさに慄きながら思う。
スギナ、見た目が杉の木に似てるからそういう名前になったらしいんだけど、俺が樅の木って思ってしまったのは、街中で杉の木なんて見ないからだろうな。樅の木は見るんだ、まがい物のクリスマスツリーの形で。
クリスマスかぁ……。
外歩き、一人の今、マスクは外してポケットに突っ込んである。きっとまだ、これからもしばらく手放すわけにはいかないその存在に、心がちょっと重くなる。
今年のクリスマスは、娘のののかと過ごせるかなぁ……。
いや、頑張れ俺。負けるな、俺。地獄草を見習え! どんなに刈られようと、毟られようと、逞しく生えてくるじゃないか。なんたって、恐竜が生まれる前から生えてるらしいからな、スギナ! 俺たちだって、めげずに日々を過ごしてたら、また前のように何の憂いもなく皆で集まって、小さな部屋で小さなパーティくらい開けるようになるさ。
マスク無しでね!