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ある日の<俺> 2022年6月3日。 女王様のおうち探し

コピペミスで、最後の一文が抜けてました。

桜も葉桜も遠くに霞み、新緑が日々濃くなりまさるこの頃──。


暑い。空は真っ青、カンカン照り。六月入ったばかりというのに、もう真夏みたい……って、あれ? 六月ってことは、今年もそろそろ半年過ぎようとしてるってことだよな……? 今更だけど、慄いてしまう。正月、餅三昧で怠惰に過ごしたのがついこの間のような気がするのに。ああ、起きて寝て仕事してるだけで時間が過ぎていく──って、当たり前か。


そんな寝惚けた一人漫才を頭の中で繰り広げながら、俺は草をむしる。むしる。キリがないなと思いながらも、頑張ってむしり続ける。スギナめ、スギナめ、スギナめ。ヒメオドリコソウめ。カラスノエンドウめ。スギナめ。根の深い上に硬いお前は確かイネ科の……何とかいうやつ。お前は仕方ないから鎌で刈る。スギナ。スギナめ。あと、カタバミ。カタバミめ。


流れる汗が鬱陶しくて、首に掛けた手拭いで乱暴に顔を拭う。あー、太陽がSUNSUN、そんなに主張しなくてもお日様は太陽以外に見えないから──とか思ってたら。


つぅ、っと。

オレンジと黒のシマシマが視界をよぎる。同時に、ブゥーンと重い羽音。


す、スズメバチ! 


息を潜めて、気配を消す。とにかく消す。俺、草刈り草むしり仕事のときは、白っぽいシャツとズボンって決めてるんだ……! だって、蜂は黒いものを襲うというし。頭だって麦わら帽子だ。


不吉な重低音を聞きながら、ゆっくり、ゆっくり退却。まだむしってない雑草たちの上を、行ったり来たりしているあのスズメバチ、俺の親指くらいの大きさありそう。もしや、女王蜂? この時期、一匹だけでいるスズメバチは、己の巣作りを目論む女王蜂だという……。


下見か? 下見に来たのか? この丸谷さんちの庭に巣を作ろうと? ヤメロ……! ここんちには小さいお子さんがいるんだ。ああ、今ここにジェットスプレー型の殺虫剤があったら……。


とにかくあっちへ行け、ここに留まるな! と必死に念じていると、ふと風向きが変わった。すると、どこからともなく、ふわっと蚊取り線香のニオイが──。


 ブゥーン ブゥゥゥーン……


ひっくり返された植木鉢に関心があったようなのに、スズメバチは速やかに飛び去った。オレンジと黒のシマシマが遠ざかり、すぐに見えなくなる。


「……」


詰めていた息を、大きく吐く。暑さとは違う汗も拭う。


世界最強といわれるスズメバチも、蚊取り線香のニオイは不快ではあるんだな……。巣作りの環境に悪いと思ったのかも。今日の俺の装備には取り入れてなかったけど、蜂の活躍する時期は必ず蚊取り線香を身につけよう。そうしよう。


それより、丸谷さんに報告だ。スズメバチの巣作り注意って。とりあえず、空っぽの植木鉢放置はやめてもらおう。危険性は減るはず。ハチが嫌うという、木酢液の散布も提案してみようか。



毎年四月から六月上旬、スズメバチの女王にご用心。彼女たち、居心地の良い物件を、鵜の目鷹の目で探しているからね! 


蜂だけど。

蜂の眼は、複眼一対+三つの単眼、だそうです。

単眼は、種類によっては退化しているのもあるそうですが、スズメバチにはバッチリあります。

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□■□ 逃げる太陽シリーズ □■□
あっちの<俺>もそっちの<俺>も、<俺>はいつでも同じ<俺>。
『一年で一番長い日』本編。完結済み。関連続編有り。
『古美術雑貨取扱店 慈恩堂奇譚』古道具屋、慈恩堂がらみの、ちょっと不思議なお話。
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