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ある日の<俺> 2022年3月27日 猫と一緒に深呼吸

昨日は全国的に荒天とかで、このあたりも午後から雨になった。

一夜明けた今日は、朝からとってもいい天気。


雨の翌日は、公園脇のお家から樋掃除の依頼が入りやすい。地面に散ってる落ち葉を見て、ウチの樋は大丈夫かと心配になるらしく、専門業者が必要になる前にと、俺みたいな何でも屋にも声を掛けてもらえるんだ。


屋根の上から見る空は、ことさら青く、太陽が眩しい。思わず深呼吸してお日様の光を身体の中に取り入れる。はー、気持ちいい。なんかこう、植物にでもなった気分。やる気を光合成してるみたいで。


よし、頑張って樋掃除続けるぞ、と落ち葉除去用に使ってる箒の柄を持ち直したとき。


「にゃーん」


現れたのは、顔見知りのお野良一匹。ぶっとい茶虎猫が、軽快に瓦を踏んでやってくる。


「こら、どっから登ってきたんだ、お前は」


「にゃ」


不安定な場所に立ってる俺の足に、すりすりすすりと身を摺り寄せてくる。


「こ、こら。俺はお前らと違って二本足で立ってるの。危ないから、よせ」


「にゃー?」


たまらずしゃがむと、お野良はにゴロゴロとご機嫌で……地面の上ならつきあってやるけど、屋根の上では止めて!


しょうがないな、と適当に構っていると、す、と俺に興味を無くしたようで、二階ベランダの下あたりに居場所を決めて、寝そべり始めた。あ、ころんころんしてる。よく転げ落ちないよなぁ。


まったくもう、と苦笑しながら、俺は樋掃除を再開した。以前からの古い落ち葉もあるけど、昨日のぶんと思しきは思ったほどでもないから、ごみ袋は今のぶんだけで足りるかな。


集めた枯葉を袋に詰めて、ふう、とひと息つく頃には、茶虎猫は熟睡。ほどけた感じのニャンモナイト姿で、だらんとしてる。瓦が温かくて気持ちいいんだろうな。猫は日光浴でビタミンDが活性化されるというし、これもある意味光合成かも。


「……」


青い空、太陽が眩しい。


屋根から降りる前に、しばしの休憩、深呼吸。猫も欠伸で深呼吸。一人と一匹、それぞれぼーっと陽射しを浴びて、生きていくための何かを光合成する。


ふと目を閉じれば、瞼の裏が明るい。

お日さまの光は平等だ。

もう四月ですが……。

頭の中が、間延びした時間の中に沈んでいるのかも……。

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□■□ 逃げる太陽シリーズ □■□
あっちの<俺>もそっちの<俺>も、<俺>はいつでも同じ<俺>。
『一年で一番長い日』本編。完結済み。関連続編有り。
『古美術雑貨取扱店 慈恩堂奇譚』古道具屋、慈恩堂がらみの、ちょっと不思議なお話。
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