ある日の<俺> 2017年12月16日。 寂しい庭にはパンジーを
今日は短いです。
空はどんより、今にも降りそう。
底冷え冷え冷え、手が悴む。
庭仕事は、寒い。
「さて、ここは黄色いパンジー……」
苗を入れた箱に手を伸ばす前に、屈めていた腰を伸ばしてとんとん叩く。頬を撫でる風が冷たい。
計画書に従って、黄色、オレンジ、赤、紫、青のパンジーを植えていく。イメージは花時計らしい。今は植えたばかりであいだが抜けてるけど、もう少ししたら苗が育っていい感じになるだろう。
軍手越し、湿った土の感触がとにかく冷たい。そのせいか、身体がちっともあたたかくならない。わりと動いてると思うんだけどなぁ。園芸用椅子を移動させながら座って作業をしているのが敗因か。
でも、この椅子無いと腰が痛いし、と思いながらも、黙々と植える。ここんちはこのエリア以外は和風で、こんな色鮮やかな植え方はイマイチ合わないと思うんだけど、依頼主の天野さん、なんか気分を変えたいらしい。
まずはプランターでどうですか? って提案してみたんだけど、とにかく丸くて可愛い感じにしたいんだって。今年はやたら風邪が長引いて、家から出られない時間が多かったから、冬でも明るい庭が見たいんだって言ってた。
この時期、銀杏の黄色以外は椿か杜若くらいしか明るい色って無いもんなぁ……。
まあ、パンジーなら最適だ。まず色の種類が多いし、発色も鮮やかだ。花は可愛いし、見てると楽しい気持ちになれる。わりと頑丈だしな。
あ、窓越しに天野さんが心配そうにこっち見てる。さっき外に出てきて庭の寒さに驚いてたもんな。湿気があるから地味に冷えるんですよ。でも大丈夫、あともう少し。
手を振って、残りの苗を示してみせる。天野さんはおタマを振ってくれた。ぜんざい作るって言ってたけど、もうできたのか。仕事なんだからそんなに気を遣ってくれなくていいんだけど、労ってくれる気持ちがうれしい。
あとひと息、頑張るぞ!