ある日の<俺> 5月17日。 ご老人に犬を紹介
寝坊した。
昨日、久しぶりに干した布団があまりにもふかふかで気持ち良くて、気がついたら三十分も寝過ごしていた。
今朝は篠竹さんの朝の散歩に付き合う約束なのに。ぎりぎりで大正生まれの篠竹さんは、目も耳もまだまだ達者なお年よりだが、足元が少々危ない。危ないが、家に閉じこもっていたら気分が落ち込むし、ならば犬でも飼って散歩に精を出そうかと思ったら、引っ張られて転びでもしたらどうすると家族から大反対。
しょうがないので、「散歩する犬を見ながら散歩」することにしたそうだ。で、よくご近所の犬の散歩を頼まれている俺に、紹介して欲しいという。
誰にって? 犬に。
「あなたに顔繋ぎしてもらえば、犬たちもこの年寄りに対して友好的に振る舞ってくれるでしょう」
ほっほっほ。
旧家の生まれらしい篠竹さんは、上品に笑ったものだ。
って。だから俺、急ごうぜ。ざばっと顔を洗って、ざざっと歯を磨いて。あああ、朝飯食ってる暇が無い。でも朝食べないと叱られる(誰にって・・・ 内緒だ)。
コップに一杯、牛乳を一気飲み。それからバナナを口に詰め込んで。よし、ポケットにはカロリーメイト。
篠竹さん、今行きますから、先に歩き出したりしないでくださいよ!
心で叫びつつ慌しく飛び出したら、ちょうど上を飛んでいたカラスに「アホー」と言われてしまった。
うるさいわい!