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ある日の<俺> 5月13日。 雨の日お迎えとおんぶ
今日は佐伯さんちの陽くん、小学三年生の塾のお迎え。
午後から雨が降り出したので、冷える。陽くんはちょっと顔色が悪かった。身体が冷えたのかもしれない。そういう時は甘いものがいい、とは今は無き俺の母から教わった知恵。俺的対子供用必須アイテム、飴をあげた。
ちょっとだけ頬の赤みが戻ったところで送って行こうとしたら、間の悪いことに陽くんの傘が壊れてしまった。
しょうがない、おんぶしていくか。この子は身体が小さいし。
いったんジャケットを脱いでから陽くんを背負い、その上からジャケットを羽織るようにして傘をさし、雨の中を歩く。
「・・・お父さん」
小さな声が呟いた。
そういえば、この子のお父さんは病気で亡くなったんだっけ・・・
俺は何も言わずに陽くんを背負い直した。小さな手が遠慮がちにしがみつく。雨が傘の上で弾ける音を聞きながら、俺はゆっくりと歩き続けた。