ある日の<俺> 5月11日。 ホラー映画の恐怖は後を引く
今日は昨日よりさらに寒い。ののか、風邪はもうよくなったって電話が来たけど、こんなんだとまたぶり返したりしないかな。大丈夫かな。元妻には心配しすぎ、って笑われたけど。
──あなたこそ気をつけてちょうだい。パパが風邪引いたら、ののかが心配するわよ。
元妻の声が蘇る。外出から帰ったらまず手を洗ってうがいして、着る物にも気をつけなさいね、とけっこう真剣に注意されてしまった。──俺は子供か。
ちゃんと薄手のジャケット持って歩いてるわい。
井岡さんちの庭の草刈作業から帰る途中の今は、そのジャケットを着込んでいる。作業中は暑かったけど、またすぐ寒くなってきたんだ。風もあるしな。
お? 向こうから歩いてくるのは怖がりなのが玉に瑕のイケメン大学生。あ、挨拶してきた。にこにこしている。ホラー映画連チャンの恐怖から立ち直ったのか?
・・・しばらく立ち話した。何かやたらに楽しそうだったが、いいことでもあったんだろうか? 俺と話してるとほのぼの? して貞子の恐怖も忘れる、と言ってたが、言葉にしたことでつい思い出してしまったらしく、ちょっと顔色が悪くなったのが心配だ。
頬を微妙に引きつらせつつ、う、うちでお茶でもいかがです? と誘われたが、今日はまだ上村さんちの電球取替えなんかの依頼があったんで、断った。独りになると、まだ思い出しちゃうんだろうなぁ。
負けるな、青年。
それにしても、『ウォレスとグルーミット』がよほど気に入ったのかな。さっそくマスコット持ってたぞ。今度会ったら、どこで買ったのか聞こう。ののかにプレゼントするんだ。
『ウォレスとグルーミット』が好きなんです・・・