表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

419/520

ある日の<俺> 2016年8月10日。  夢に追われて早朝の猫散歩

「あ、何でも屋さん……おはようございます」


あ、赤萩さん。


「おはようございます。豆狸まめだちゃんもおはよう」

「にゃー」


豆狸ちゃんは赤萩さんの飼い猫だ。今年の春、いきなり玄関から入り込んできて居ついてしまい、たまたまペット可のマンションだったこともあり、なし崩しに飼うことになってしまったという。きれいなシャム柄だけど、顔がやたらに丸く、小さな狸みたいだから豆狸と付けたらしい。


去年この辺に越してきたばかりの赤萩さんは、猫の春(発情期)の声も知らないくらい猫に縁が無かったらしいのに、分からないもんだ。


実家では犬を飼ってたという赤萩さんは、たまにこうやって豆狸ちゃんの首輪にリードを付けて散歩してる。……それにしても。


「今日は早いですね?」


うん。今、午前五時十五分。俺、五時前に起きて、これから山名さんちのジャーマンシェパードのムーサくんを散歩に迎えに行くところ。ムーサくんの後はグレートデンの伝さんとも散歩するから、このところいつもより三十分ほど早起きしてる。眠い。


夏のペットの散歩は早朝か、日が暮れてからがお約束だけど、今まで朝の五時台に赤萩さんを見たことはない。たまに会うとしても夕方か夜だ。


「何か、最近眠れなくて」


ふわぁ、と大きな欠伸をする赤萩さん。何だか消耗してるようだ。


「変な夢ばっかり見て、今朝も四時半ごろかな? 目が覚めて。せめていつもの起床時間まで寝ようかと思ったんだけど、またその夢見そうだから……」


豆狸ちゃんと早朝の散歩に出て気分転換を図ったと。


「眠れないと体力を消耗しますよね。今日も最高気温36度らしいし、熱中症とか気をつけてくださいね」


「はい……。ありがとうございます」


赤萩さんはふらふらと歩いて行った。去り際、豆狸ちゃんが俺の顔を見て「にゃん」と鳴いた。とことこと飼い主の足元に着いていく。可愛いな。


それにしても、赤萩さん大丈夫かな? 朝の通勤電車で倒れそうかも。明日は「山の日」で祝日だから、今夜はゆっくり休めるといいけど。


──おおっと、ムーサくんムーサくん。つい気になって赤萩さんの背中を見送ってしまってた。ま、こっから山名さんちまでは五分くらいだし、余裕だな。しかし、「山の日」っていつの間に出来たんだろうな。謎だ。

赤萩さん初登場は、「ある日の<俺> 2015年2月10日。ホラー映画と猫」です。

http://ncode.syosetu.com/n5805bw/375/

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
□■□ 逃げる太陽シリーズ □■□
あっちの<俺>もそっちの<俺>も、<俺>はいつでも同じ<俺>。
『一年で一番長い日』本編。完結済み。関連続編有り。
『古美術雑貨取扱店 慈恩堂奇譚』古道具屋、慈恩堂がらみの、ちょっと不思議なお話。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ