ある日の<俺> 2016年7月21日。 アイスクリームは大当たり
あんまり暑いから、ペンキ塗りの仕事の帰り、コンビニでアイスを買った。ついでにおにぎりとアンパン。
溶けるから、歩きながらアイスだけ食べる。ぺりぺりぺりと包紙をめくるそばから溶けそうだ。おおっと危ない口の中に避難。包紙は畳んでコンビニ袋の中。
これも色んな味が出てるけど、基本はやっぱりバニラだよな。うーん、美味い。
チープだけど変わらない懐かしい味に頬がゆるむ。よく弟とどっちが早く食べられるか競争したなぁ。ばくばく食べて、二人してこめかみの痛みに悶絶したっけ。お約束。
棒までていねいに舐めるのもお約束。ふう、ちょっとだけ涼しくなった。って、お? 当たりじゃないか? 平たくて細長い棒に、<一本当たり>の文字。うわー、何年ぶりだろ。うれしいもんだなぁ。よし、これは明日のお楽しみだな、と思いながらふと横の公園に目をやると、しょんぼりと佇む男の子がひとり。小学生かな? そういえば今日から夏休み。
その子の足元を見ると、落として溶けたアイスの残骸。見る見るうちに崩れて消えていく。
きっとここは当たりの出番。俺はちょっと歩いて公園内の水飲み場で当たり棒を洗うと、Tシャツの裾で拭き、男の子に差し出した。
「あげるよ。あそこのコンビニに持って行ったらアイスと交換してくれるよ」
「……しらないひとからもらっちゃダメだって」
今のご時勢、この子が正しい。だけど。
「アイスくれるのは、コンビニの人だよ。お店の人ならいいだろう?」
これはただの引換券だよ、そう言って男の子に差し出すと、おずおずと手を出してきた。
「今日から夏休みだよね。いっぱい遊んだ後は勉強もするんだよ。宿題を終えて食べるアイスは格別だ。頑張れよ」
俺の言葉に男の子は頷くと、控えめながらも笑顔を見せてくれた。たどたどしくも礼を言うと、コンビニに向かって駆けて行く。
うん、この笑顔が今日の俺の<大当たり>だ!