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ある日の<俺> 5月9日。 ホラーとオカルトは苦手です

本日の依頼。


──ホラー映画を一緒に見て欲しい。


何じゃそりゃ? と思ったが、話を聞いて納得、というか何と言うか。


本人はすっかり成人しきった今ですら、夜中のトイレが苦手という超怖がり。だというのに、初めて好きになった彼女が大のホラー映画好き。で、次のデートは今話題のオカルト・ホラー映画を観にいく約束になっているという。


──彼女の前で悲鳴を上げたりしないように、今から耐性をつけておきたいんです。でも、絶対独りでは見られないし、かといって友人達にだってこんなこと頼めない。お願いです。あなたなら<仕事>として守秘義務を守ってくださるでしょう?


そういう彼は、見たところ非の打ちどころの無いイケメン。顔良し、スタイル良し。大学でも成績優秀で通っているという。・・・そりゃ、そんな弱点(?)を他人に知られたくはないわな。ちなみに、「自分から好きになったのが初めて」なのであって、今までそれなりにカノジョを切らせたことはないらしい。


本気の彼女には、いいとこ見せたいってわけだ。


ま、その気持ちは分かるし、提示された依頼料も結構な金額だったので(口止め料も入ってるんだろう)、喜んで受けさせてもらった。


が。


俺は後悔した。


『リング』『死国』『富江』『着信アリ』『サスペリア』『呪怨』『仄暗い水の底から』『オーメン』『エクソシスト』『シャイニング』・・・


背筋がぞわぞわとして寒気がするし、夜、一人でトイレに行くのが嫌だ。部屋の隅の暗がりが怖い。俺は思わず身震いした。そして、依頼者の彼は・・・


目を開けたまま失神していた。


ダメだ、こりゃ。正直に話した方がいいぞ、青年。


その日は乞われて依頼人の部屋に泊まった。が、寝ると怖い夢を見そうだったので、全然眠れない。依頼人も同じようで、朝見ると目の下にクマが出来ていた。目は真っ赤だ。多分俺も同じだろう。


教訓。


過剰な努力は時に逆効果となり、より事態を悪化させることもある。


なあ、青年。強がりはよそうぜ。さあ、一緒に『ウォレスとグルーミット』でも見よう。念のために借りておいてよかったぜ。


毛皮は白く顔は黒い羊の「ぷるぷる」は、「ショーン」っていうんですね。

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□■□ 逃げる太陽シリーズ □■□
あっちの<俺>もそっちの<俺>も、<俺>はいつでも同じ<俺>。
『一年で一番長い日』本編。完結済み。関連続編有り。
『古美術雑貨取扱店 慈恩堂奇譚』古道具屋、慈恩堂がらみの、ちょっと不思議なお話。
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