ある日の<俺> 2016年4月20日。 桜の庭で草むしり
春の晴天は、朝夕冷えて昼暑い。身体を動かしているならなおさら。
現在、新田さんちの庭で草むしり。春が来ると、一雨ごとに草が勢いを増す。ちょっと油断するとすぐにぼーぼーだ。──新田さんは油断してしまったらしい。
三月に転勤が決まってから、引継ぎやらなにやらでてんやわんや。とてもそれどころじゃなかったそうだ。奥さんは花粉アレルギーでこの時期外に出られないというし、そりゃしょうがないよな。お陰で俺みたいな何でも屋にも仕事が回ってきます。ありがたいです。
ああ、まだ細いけど、花がきれいだなぁ。
草をむしる手を少し休めて、俺は今満開の八重桜の木を見上げた。
庭弄りがしたくて頑張った一戸建て、これは記念樹だそうだ。せっかく咲いた今年の花を愛でる暇も無く、新田さんは慣れない職場で奮闘しているという。転勤といっても家から通える距離だし、夏ごろには仕事も落ち着くはずだから、と新田さんは苦笑いしてた。
生えた草を、むしりたい──。俺が下見に来た時、そう呟いて雑草に侵略された花壇を見つめてた新田さんの目には、昏い光が宿ってた。
ストレス溜まってるんだな、きっと……。