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ある日の<俺> 2016年4月5日。   猫のチャーちゃん鈴鳴らす

今日は昨日に比べて冷える。朝からずっと曇りっぱなしではっきりしない天気だったけど、夕方から晴れてきた。


「空が青いなあ、伝さん」

「おん!」


こんな夕べは、散歩するのが気持ちいい。グレートデンの伝さんも楽しそうだ。俺の勝手に決めた「犬の散歩・公園めぐりコース」を軽く走ると、軽快な足音がついて来る。


夕空晴れて、春風吹き。月影落ちて──って、月見えないや。今の季節に鈴虫いないしなぁ。


そう思ったとたん、聞こえてくる鈴の音。ちりちりちりちりちりんちりん。


公園出入り口の四角い車止めの上を、飛び歩いているのはシャム柄の猫、チャーちゃんだ。チャーちゃんめ、俺の考えを読んでたんじゃあるまいな? じっと見てると「にゃ」と鳴いてそこに座り、何か用? と言うように俺と伝さんを見る。


「おふふん」


伝さんがチャーちゃんの匂いを嗅いでも知らん顔。自分の何倍も大きい犬に近寄られても動じないとは、大物だな、チャーちゃん。伝さんは犬でも猫でも小さい子が好きだから、チャーちゃんもそれが分かるのかもしれないな。


しばし異種間のいささか一方的な交流を微笑ましく眺めていると、チャーちゃんはまた「にゃ」と鳴いて、首輪の鈴をちりちり鳴らしながら去って行った。家に戻るらしい。半野良みたいなチャーちゃんだけど、飼い主さんの家から十メートルも離れないという話だ。


名残惜しそうにチャーちゃんを見送る伝さん。その鼻に、満開の桜の花びらがひらりと落ちた。


夕空晴れて、春風吹き。花びら落ちて、鈴の音去る。


落ち込むな、伝さん。この時間なら、向こうの方からビーグルのケンちゃんが飼い主の鷲尾さんと一緒に歩いてくるぞ。ケンちゃんはチャーちゃんよりも社交的だ。頑張れ!

ポイントとブックマークをありがとうございます。


この翌日、4月6日の話が『古美術雑貨取扱店 慈恩堂奇譚』の「転ばせ桜」です。

http://ncode.syosetu.com/n5750bw/40/

猫のチャーちゃんがわりと重要な役割を果たします。

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□■□ 逃げる太陽シリーズ □■□
あっちの<俺>もそっちの<俺>も、<俺>はいつでも同じ<俺>。
『一年で一番長い日』本編。完結済み。関連続編有り。
『古美術雑貨取扱店 慈恩堂奇譚』古道具屋、慈恩堂がらみの、ちょっと不思議なお話。
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