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ある日の<俺> 2015年12月16日。 金の雨、銀の雨
金の雨、ふるふる。
何だっけ、これ。──ああ、別れた元妻が教えてくれたんだっけ。
銀の雨と、金の雨。金の雨は、銀杏の落ち葉だ。どんよりと曇った空から落ちる小雨が時折通り過ぎる車のヘッドライトに銀色に輝き、その光に誘われるように、鮮やかな黄葉が金色に降り注ぐ。
後から後から。いつ尽きるとも知れないほど。際限ない。放りない。いや放りないはしょーもないギャグだけどさ、聖夜じゃないし。
毎年恒例の銀杏並木の落ち葉掃き。この季節、雨の日は昼でも暗い。そして、雨を含んだ落ち葉は重い。
金の雨、ふるふる。
銀の雨、ふるふる。
初めてのデート、金色の銀杏並木。彼女が教えてくれた、アイヌの神様のうた。
今も覚えている彼女の涙は、銀の雫のようで。
あの時、俺は彼女に何て答えたんだっけ。
ああ。竹箒が重いなぁ……