表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

382/520

ある日の<俺> 2015年6月12日。  手々噛むイワシは獲~れ獲れ

毎年、この季節になると。


 いわっしや いわっしや いわっしや


商店街の魚屋さんから聞こえてくる、威勢のいい呼び込み。


 ててかむいわしや とれとれやで~!


群がるお客の注文に応じて次々にビニール袋に入れられるイワシは、ビッカビカのぎんぎらぎん。呼び込み文句の通り、今にも手を噛みそうなくらい獲れたての新鮮さ。


「大将、イワシ十二匹お願いします!」

「お? 何でも屋さん、岩松爺さんのお遣いか?」


袋に手早く詰めて渡してくれながら、大将が言う。


「はい。なんか、今年はイワシのてんぷらと、つみれをつくるらしいです。生姜と青紫蘇も頼まれてて」


「年くってから料理し始めたら凝るっていうしなぁ。あ、つみれと青紫蘇を餃子の皮に包んで揚げても旨いで!」


「ありがとうございます。提案してみます」


この魚屋の大将は、料理のちょっとしたアレンジを教えてくれたりもするので、実は密かな人気がある。スーパーの鮮魚コーナーより、少しだけ足を伸ばしてこの店に来るお得意さんも多い。


女将さんに代金を渡してお釣りをもらう。そこでちょっと客が切れたみたいで、また大将の呼び込みが始まる。


 いわっしや いわっしや いわっしやで~! 手々噛むイワシや、獲れ獲れやで~!


その声に釣られてまた人が来る。


日ごろ近隣のスーパーや大型店に押され、この商店街もちょっと寂しいけど、魚屋に限らず、たまにはこんなふうに活気を取り戻すこともあるから、買い物を頼まれる俺としてはうれしくなってくる。


今日は鬱陶しい天気だけど、岩松爺さんは俺にもイワシ料理を振舞ってくれるというし、なんか元気になれそうだ。


ののか、パパ、今日も頑張るからね!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
□■□ 逃げる太陽シリーズ □■□
あっちの<俺>もそっちの<俺>も、<俺>はいつでも同じ<俺>。
『一年で一番長い日』本編。完結済み。関連続編有り。
『古美術雑貨取扱店 慈恩堂奇譚』古道具屋、慈恩堂がらみの、ちょっと不思議なお話。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ