ある日の<俺> 2015年2月28日。 釣られた俺
二月最後の日、まだまだ肌寒いけど上天気。
こんな日は、お弁当持って娘のののかと公園ピクニックでもしたいな……と思いながら、頼まれ物の荷物で重たい自転車を押して歩いてたら、またあの太公望猫がいた。
塀の上から、これ見よがしに茶トラ柄の釣り糸を垂らしてる。今日は何故か、黒くてツヤツヤしたのも一緒に垂れてた。
あの大きさ、尻尾の長さ。あれは羅照さんちの黒猫……。太公望猫の隣に座って何やってるんだろ。釣り仲間になったんだろうか。
白い塀に、てれんと垂れたオレンジと黒の釣り糸ならぬ釣り尻尾。シュールな絵面につい立ち止まって凝視してたら、いきなり塀の向こうから新たな猫が現れ、二匹の隣に座ったかと思うと、徐に白黒ぶち柄の尻尾を垂らした。
塀に垂れる、三本の尻尾。
なんなんだろう、これ。釣りが流行ってるのかな、この辺りの猫に。
「……釣れますか?」
ぽろりと零れたしょーもない問いに、黒猫がにゃん、と鳴いて尻尾を揺らした。肩越しに振り返ってこちらを見た金色の目が、にやり、と笑ってるように見えた。
……
……
思わず携帯カメラで釣り尻尾を激写した俺は、もふもふした釣り師たちにしっかり釣られてしまったようだ。