ある日の<俺> 2015年2月22日&27日。 釣れますか?
ある日の<俺> 2015年2月22日。
何だろう、あれ。
ブロック塀の透かしから垂れ下がってる、あれ。
透かしはちょうど俺の肩くらいの高さで、そこから鮮やかなオレンジ色の茶トラの棒が、てれーんと垂れてる。
塀の内側には盆栽棚が設えられているのだが、野良猫が勝手に来て寝そべってたりするのを俺は知ってる。夏場、ここんちの水遣りを頼まれることがあるからな。
てれんと伸びた猫の尻尾が、たまにぴくりと動く。でも、引っ込める気配が無い。そこで、思わず俺は呟いていた。
「……釣れますか?」
ある日の<俺> 2015年2月27日。
昨日の雨は酷かったなぁ、とか思いながら、今日も朝から雲の向こうに隠れてるお日様の輪郭を目で追いながら歩いてたら、角の家の門柱に後ろ向きに座った猫が尻尾を垂らしてた。
見覚えのある、オレンジみたいなきれいな茶トラ。二月二十二日の猫の日に、ブロック塀の透かしの穴からこれ見よがしに垂れてた、あの尻尾だ。
てれーん。時折、ゆらゆら。
なんで見るたび尻尾を垂らしてるんだろ。やっぱり釣り? 猫好きなら釣れるかも? などとバカなことをぼーっと考えながら見てたら、向こうからハイペースでジョギングしてきた大学生ふうの若い兄ちゃんが、通り過ぎざま猫に声を掛けていった。
「よ、太公望!」
あまりにもぴったりな呼び名に、思わず俺は吹き出した。
猫の尻尾は別の生き物。