ある日の<俺> 2014年7月28日。 おまけ。送りわんこ
ちゃっちゃっちゃっちゃっ
後ろからついてくる、
ちゃっちゃっちゃっちゃっ
大型犬の足音。
気のせい?
うん、きっと気のせい。
吉良さんちの草むしりが終わって、今は昼飯食べに帰る途中だ。真夏のこんな昼日中、犬の散歩をさせる人なんていないし。
ちゃっちゃっちゃっちゃっ
この辺りに野良犬はいない。
だからこれは気のせい。
カメムシ・アタックのダメージを引きずりながら草むしりを終えると、吉良さんが冷たい葛の和菓子と麦茶を出してくれた。顔色が悪い・・・熱中症? と心配されたんだけど、これは単にカメムシ臭の直撃を受けたせいです・・・。
あれは、クサイ。
それでも吉良さんは心配して、保冷剤をハンドタオルに包んだのを用意してくれたので、ご厚意をありがたく頂き、頭に乗せて帽子を被った。これ、充分自宅まで保つよ。冷たくて気持ちいい。
ほう・・・。
「──お姉ちゃんたちが待ってるぞ?」
前を向いたまま、なんとなく後ろに向かって声を掛けると、
ちゃっちゃっ・・・ちゃっ・・・ちゃっ・・・
足音が遠ざかって行った。
吉良さんが、途中で倒れたりしないだろうかと俺を心配してくれたから、それで主人の代わりに送ってくれたんだろうなー、なんて。
気のせいだ、気のせい。
それにしても、頭のてっぺんが冷たいのが気持ちいい。保冷剤、こんな使い方もいいよなぁ。
この世にいなくても、忠実なわんこ。