ある日の<俺> 2014年5月30日。 化粧もペンキも下地が大事
青い空。時々微風。最高気温31℃。
山田さんちのボロボロな鉄柵を見て思う。
なんというペンキ塗り日和!
カリカリ、カシカシ。
ペンキを塗る前に、お好み焼き用の小さいコテと荒目のサンドペーパー、古布を使って鉄柵の錆を丁寧に落とす。下地が肝心なのは、女性の化粧と一緒だよな。
・・・うん。そんな喩え、女装バーのマスター、というか、ママ? の芙蓉のヤツに俺自身がメイクされるなんて経験が無かったら、浮かばなかったよ。っていうか、浮かびたくなかったなぁ・・・
──メイクの基本は、下地よ。いくらファンデーションやパウダーを上手に塗ったつもりでも、下地を疎かにするとキレイに見えないし、崩れるのも早いわ。
うん、そうだね、芙蓉。錆を丁寧に落として下地を整えないと、ペンキ塗ってもキレイにならないし、きっと剥がれるのも早いだろう。
頭の中で、俺の良く知る女装の麗人が嫣然と微笑む。
──そうよ。分かってるじゃない。
くっそー、俺の馬鹿! 何で芙蓉なんか思い出してしまったんだ。あいつ、すぐ俺に女装させたがるんだよなぁ。くっ! 錆取り=化粧下地、と連想してしまった俺の負けなのか? そうなのか?
・・・照り付ける太陽の下、独り謎の敗北感に打ち拉がれる俺。
あああああ、暑い!
・・・
・・・
ふう。
昨日も暑かったし、疲れてるんだな。ちょっと休憩して、塩麦茶飲んで飴舐めよう。
ののか、パパ、芙蓉なんかに負けずに頑張るからね!