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ある日の<俺> 1月16日。 消えた足跡 足かっくん
足跡が、消えた。
俺の。
・・・
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気づいたら、側溝にはまってた。秋に立ち枯れた雑草が被さってて、うっかり足を踏み出してしまったんだ。
あの感覚。地面があると思って踏み出したのに、それが無かった時の感覚。何て表現すればいいんだろ、膝裏を不意打ちで突かれる<足かっくん>の、百倍くらいのかっくん具合?
・・・
・・・
側溝の上に出ている上半身を地面にうつ伏せに投げ出して、しょーもないことを考える俺。が、ふと顔を上げると、ついさっきまで必死で追いかけていた家出猫のシマちゃんが、ほんの目と鼻の先、知らん顔で毛づくろいしてるではないか。
・・・あたしをつかまえてごらんなさ~い、ってか?
ふ、待ってろシマちゃんめ。人を散々翻弄しやがって。捕まえたら、飼い主の香山さんが即、獣医さんに連れて行くって言ってたぞ。何たって、家出も五日め、蚤とかダニとか病気とか心配だから、いっぱい検査してもらうってさ。
獣医さんが嫌いらしいなぁ、シマちゃんよ。
ふっふっふ。
我ながら邪悪な笑顔を浮かべながら、俺は勢いをつけて側溝から脱出し。家出ペット捕獲用の小さい網を、構える!