ある日の<俺> 7月11日。 花火の夜
ヒュー・・・ドォン!
ヒュルルルー・・・ドン ドン!
あれ、花火?
そう思って転寝から覚めた。
風呂上りにビール飲んで、ふう、とぼろソファに身を沈めたら、急に眠気が押し寄せてきた。ちょっとだけ、と思って横になってしまったけど、いかんいかん、エアコン入れてるから、風邪引いてしまう。
今日も暑かったよなぁ。芝刈りとか雑草引きとか屋外での仕事が続いてるから、よけいに疲れてるのかもしれない。もうベッドに入るか。いや、その前に花火。窓から見えるかも。
カーテンを開こうとして、あれ? と思った。
この辺りで、花火が上がるようなイベントがあったっけ?
開いてみると、カーテンの向こうはただの夜空。そんなに遠くはない駅前繁華街のネオンが、やけに明るく見える。静かだ。いや、どっかの車のクラクションとか、電車の音とかはかすかに聞こえてくるんだけどさ。
でも、さっきのは確かに花火の上がる音だと思ったんだけどなぁ。
夢でも見たのかなぁ、と思いながらカーテンを閉め、ビールの缶を片付けてからもう寝ようと室内に向き直ったとき、それが見えた。
七月のカレンダー。今月の写真は、夜空を背景に、ほんのひと時だけ光の花を咲かせる、花火。
「・・・今、上がったとこ?」
まさかね。俺は独り首を振った。我ながら、何メルヘンなこと言ってるんだか。
はぁ、思ったより疲れてるらしい。片付けは明日にして、今夜は寝よう。
その日の夢は、花火三昧だったような気がする。
不思議に、音はしなかった。
ま、夢だし。