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ある日の<俺> 12月13日。 伝さんと会話
雨の切れ目を縫って犬の散歩。
久しぶりの伝さん、俺の顔を見てうれしそうに尻尾を振ってくれる。顔はクールなんだけど、こういうところが正直っていうか、俺もうれしい。
「元気にしてたか、伝さん」
「おぅん!」
「そっか。ツヤツヤしてるもんな」
「おん!」
「何ていうか、伝さんてホント地獄の番犬のようにカッコイイよな。そんなもん見たことないけど」
「おうん?」
会話(?)しながら歩く、一人と一匹。傍から見たら、怪しいだろうなぁ。
「なー、伝さん、俺、このあいだ深夜に怖いもん見ちゃってさー」
「ふん?」
「寝ぼけて、夢でも見たんだと思うけど・・・伝さんも夢、見るかい?」
「おんっ!」
何となく、会話が成立してしまってるのが、一番のミステリーかもしれない。