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ある日の<俺> 11月4日。 九官鳥は夜の女王
あっ!自転車押しながら歩いてたら、聞こえてきた。
──であへれらっ~へこっひまいねむへるつぇん とーとうんふぇあつう”ぁいふるん♪
ちょっと聞くと人間の声、しかも素晴らしいソプラノの歌声に聞こえるが、実は違う。歌っている、いや、鳴いているのは・・・
──とーとうーんふぇあつう”ぁいふるんふら~めうみっひめ~♪
国木田さんちの九官鳥、キュリちゃんだ。キュリちゃん、ちょっと前に逃げ出して二週間ほど行方不明になってたんだが(そして俺が見つけて捕まえたんだが)、その時にはこの歌を覚えて鳴いて(?)いた。
捕まえた時、びっくりしたよ。人間そっくりの声で「ははははははははは~♪」だもん。国木田さんも困惑してる。そんなん、家で聴いてたこともなかったって。
キュリちゃん、どこで覚えてきたのかなぁ。
モーツァルトの『魔笛』から、『復讐の心は地獄のように我が心に燃え』。