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ある日の<俺> 7月13日。 かたつむりと伝さん
紫陽花の葉に、かたつむり。
雨に濡れてるのが、また風情がある。
・・・土砂降りだけどさ。かたつむりは、葉っぱの裏側で雨宿りしてるみたいだ。
秋津さんちの白い紫陽花も、そろそろすがれてきた。こうやって花の命も終わろうというのに、一向に終わらないのがこの梅雨空だ。今日は各地で大雨警報続出。九州の方なんか大変らしい。
降らないのも困るけど、降りすぎるのも困る。
ついシリアスに日本の自然災害について考えていたら。
「おいこら、伝さん!」
「おう?」
ったく、小首を傾げて上目遣いなんかするんじゃないよ。可愛いじゃないか。でっかいグレートデンなのに。
「かたつむりは喰うなよ。伝さんはヨーゼフって名前じゃないだろ!」
「おぅん・・・」
俺の言うことが分かったのかどうかは謎だが、伝さんはかたつむりにちょっかい掛けるのをやめてくれた。俺はほっと息をつく。だってさ、かたつむりとか、どんな寄生虫持ってるか分からないじゃないか。
あのアルムの山のヨーゼフは、厳しい環境の中で耐性を獲得したのかも知れないけどな。