ある日の<俺> 7月10日。 白い紫陽花と伝さん
明日は雨だというので、今日はグレートデンの伝さんと長めの散歩。小雨程度ならいいけど、この間も豪雨だったし。梅雨時の雨は侮れない。
まだ熱くなってないアスファルトの道を、爪の音もチャッチャと軽快に歩く伝さん、ご機嫌だ。昨日は一日雨で、飼い主の吉井さんとの散歩は短めだったっていうから、<長距離コース>を歩くのが楽しいんだろう。
あ、秋津さんちの庭が見えてきた。毎年見事だよなぁ、紫陽花。この季節になると、ここんちの庭の半分が真っ白い花に埋め尽くされるんだ。
──綺麗だけど、紫陽花なのに白い花ばっかりだと寂しいよな。
初めはそんなふうに思ってた。けど、今は違う。
こんなふうな梅雨の晴れ間、朝露を浴びて輝く白い紫陽花は、きらきらした光の粉をまとっているみたいに見えるんだ。
「きれいだよなぁ、伝さん」
「おんっ!」
付き合いみたいにひと声吠えて、そのまま歩き続ける伝さん。・・・まあ、伝さんたち犬の視界はモノクロだっていうから、紫陽花の色がどんなんでも関係ないんだろうけど、光の加減みたいなのは分かると思うんだ。
ま、伝さんには、花より散歩、だな。
「よし、伝さん。走るか!」
「おんおんっ!」
すごく嬉しそうだ。
行くぜ相棒! 公園までジョギングだ!