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ある日の<俺> 4月5日。 桜に猫
今日も満開の桜。
花が開く前も、開いた後も、気温の低い日が続いてる。お陰で、今年の桜は長持ちだ。
折りたたみの梯子を自転車の荷台にくくりつけ、乗らずにゆっくり押していく。
さっき電話もらって、三丁目の飯田さんちに行く途中だ。何でも、二階のベランダから、うっかり一階の屋根の隙間に携帯を落としてしまったという。
ま、普通の家にはあんまりこの手の梯子、置いてないからなぁ。
ふわふわ綿菓子みたいな桜を愉しみながら歩いていく。と、一本の老木の枝に猫がいた。真っ白だ。大きさからして、中猫と子猫の間くらいかな?
何だか、桜の薄紅に同化してるみたいだけど。
あー、はいはい、登ったはいいけど、降りられなくなったんだな。ちょうど梯子があるし、降ろしてやるとするか。飯田さんは猫好きだから、少しくらい遅れても理由を説明したら許してくれるだろう。
だから、引っ掻くなってば!