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ある日の<俺> 4月7日。 散る花に
朝は桜吹雪、夕方は桜の絨毯。
満開だった桜が、散っていく。レインコートを着けたグレートデンの伝さんの、濡れた鼻の頭にひとひら、薄いピンクの花びら。
飼い主の吉井さんは花冷えで風邪気味とかで、ここ数日、朝夕は伝さんの散歩が俺の仕事だ。
散る桜、残る桜も散る桜。
今日は戦艦大和が轟沈した日だ。散り敷く桜の花びらを見ていたら、ふと、そんなことを思い出した。
散る桜 花びら海まで流れて行くか
花は散れども 木は残り
花を咲かせる 千代に八千代に