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ある日の<俺> 3月27日。 桜とウソ
春休みの今日は娘との面会日。手を繋いで、公園の桜の下を歩く。
まだ三分咲きというか。
もう三分咲きというか。
この子も四月からは三年生。成長していく娘の姿がうれしくもあり、また寂しくもある。
「パパ!」
「ん? どうした、ののか?」
いつの間にかもの想いに耽っていた俺は、娘の興奮した声で我に帰った。
「あそこ、ほら、小鳥さんがいる!」
「ああ・・・」
小さな鳥が、小さな桜の花房を咥えている。
「あれは、桜のお花を食べてるんだよ」
「お花を食べるの?」
驚いたように俺を見上げる娘に、俺は微笑んでみせる。
「うん。食べるよ。桜の蜂蜜っていうのがあるくらいだから、甘いのかもしれないね」
「桜のはちみつ? おいしいの?」
「おいしいと思うよ」
桜の蜜かぁ、なめてみたいなぁ、とはしゃぐののか。来年も、再来年も、こんなふうに手を繋いでのんびり過ごせるだろうか・・・