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ある日の<俺> 11月15日。 チンピラ・シンジ、たこ焼き屋にジョブ・チェンジ

駅裏を歩いていたら、久しぶりにシンジに会った。なんと、たこ焼き屋を始めたらしい。


「最近顔を見ないと思ったら。チンピラ、廃業か?」


からかいがてら訊ねると、苦笑いしている。


「チンピラチンピラ言わないでくださいよ~、もう」


「何にせよ、めでたいじゃないか。ルリちゃんも喜んでるだろ?」


ルリちゃんというのは、シンジの彼女だ。高級クラブで働くいわゆる<夜の蝶>だけど、気立てのいい、優しい女の子だ。


「うん、まあね。試作品食べさせすぎたんで、太った、って怒られましたっす」


「で、合格はもらえた?」


「同僚の女の子たちや、店のママにも味見してもらって、何とか美味しいって言ってもらえるようになったっすよ!」


笑顔が輝いてるぜ、シンジ。俺もうれしくなってくる。


「へえ。じゃあ、俺もひとつもらおうかな」


「まいど~! お客様第一号っすね~」


おお、今日が開店日だったのか。


「光栄だなぁ。美味いの、焼いてくれよ!」


「了解っす!」


ソースと粉カツオと青海苔の、オーソドックスなたこ焼きは、けっこう美味かった。ちょっと焦げたのをオマケしてくれたのもうれしい。


「うちのたこ焼き、冷めてもレンジでチンしたらまた美味しくなりますよ~。どうぞ、ご贔屓に!」


「うん。うちのお客様たちにも、それとなく宣伝しとく。頑張れよ、と、あシンジ! 次のお客さんだ、お客さん。じゃあな!」


「わわわ、少々お待ちくださいね~すぐ焼けるから」


シンジとお客様第二号のやり取りを背中で聞きながら歩き出す。知らないうちに笑みがもれていた。


ちょっと軽薄に見えるけど、シンジ、根はとても真面目なやつだ。たこ焼き屋、流行るといいなぁ。


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□■□ 逃げる太陽シリーズ □■□
あっちの<俺>もそっちの<俺>も、<俺>はいつでも同じ<俺>。
『一年で一番長い日』本編。完結済み。関連続編有り。
『古美術雑貨取扱店 慈恩堂奇譚』古道具屋、慈恩堂がらみの、ちょっと不思議なお話。
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