ある日の<俺> 9月30日。 風呂場に猫が
風呂場のドアを開けたら、猫がいた。
ある日ふらっとやってきて、このボロビルに居ついた三毛猫。風呂の蓋の上で、大の字になって寝ている。
こら、腹出して寝るな。熟睡するな。
野良猫のくせに、何だその警戒心の無さは!
・・・けど、俺が飼ってることになるのかな、一応。餌やってるし、外の廊下にトイレも設置してやってるし。
普段、ほとんど寄ってこないし、部屋の中まで入ってくることは滅多にないんだが、このところめっきり朝夕冷えるようになったからな。暖かい場所を求めて来たのか。てか、いつ部屋に入った。どうやって風呂場のドア開けた。
謎なやつだ。
いや、存在自体が謎かもしれん。なんせ、雄の三毛猫だ。
普通、三毛猫といえば必ず雌だが、ごくごくごくたまに雄も生まれるらしい。世にも珍なる雄の三毛猫、好事家ならばいくら札束を積んでもいい、というくらい手に入れたいものらしいが、俺にとってはどうでもいい。てか、邪魔。
「そこどけ! 俺が風邪引くだろ!」
ドア開ける前に服脱いで、俺、今、丸裸なんだよ。風呂場が狭いからさ。独り暮らしだし。
「なー」
不満たらしい声を上げる猫。
「何が『なー』だ。早くどけったら!」
「うなん!」
何ぃ、嫌だとぉ? よろしい、ならばこうしてくれるわ! 俺は、蓋で猫を簀巻きにする真似をしてやった。
「にゃん!」
逃げていきやがった。ふふ、俺の勝ちだぜ!
心の中で快哉を叫んだところで、
「べくしょいっ!」
くしゃみが出た。ううう、すっかり冷えてしまった。掛かり湯をして、早く湯船につかろう。