ある日の<俺> 4月21日。 ジグソーパズルとマスオさん 8
「な、なんだってそんなことしたんです、お舅さんは」
俺は訊ねた。誰だって訊ねるよな?
理由、知るの怖くても。
「意地悪すぎますよ・・・!」
──意地悪って、あなたも可愛いこといいますね。
受話器の向うで、少しだけ笑う声。けど、それもすぐに疲れた声に変わる。
──もし意地悪なだけだったら、ある意味、義父も可愛いですよ。シンデレラの継母みたいなもんで。
シンデレラの継母って、可愛いか? てか、あんたがシンデレラなんですか、池本さん! 大学まで柔道やってたという、熊のような巨体のあなたが! って、大袈裟だけど。
──あのヒト、こう言いましたよ、『やってみたら、ジグソーパズルって楽しいだろう? 食わず嫌いはいけないよ』って。つまり、わざと俺がパズルをやらないといけなくなるような状況を用意していったわけですよ、旅行に行く前に。
「それって・・・」
──もちろん、俺があのオペラ・ガルニエを落っことしたりしない可能性もあるわけだから・・・
「罠を仕掛けていったってことですか? 獲物が掛かっても掛からなくてもどっちでも困らないけど、帰宅後のちょっとした愉しみ、みたいな?」
──ですね。
池本さんの言葉に俺は絶句し──次の瞬間、声を上げていた。
「可愛くねぇ!」