ある日の<俺> 4月21日。 ジグソーパズルとマスオさん 6
<俺>が相原さんに提供?したネタについては、「ある日の<俺> 年4月11日。 犬耳桜木R18」をどうぞ。
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相原さんに連絡を取ってみると、ちょうど入稿明けで予定が開いてたらしい。事情を話したところ、快く相談に応じてくれた。池本さんに了解をもらい、パズルを広げているリビングまで来てもらう。
彼こそ、最終兵器彼氏(ゴロを合わせてみただけだけど、気持ち悪いな・・・)。
相原さんは漫画家だ。趣味の同人誌もやってるらしいが、商業誌でもそこそこ売れているらしい。彼にはこの間ネタを提供したので(そんなつもりじゃなかったんだけど)、「何でも屋さんにはお礼をするよ」と言われていた。
今回、それに甘えることにしたんだ。
「これなんだけどね、相原さん」
俺はそこだけ別世界の小さなピースを指で示した。
「何とかなりませんか?」
そう。俺は相原さんに、仲間はずれのピースの絵を周囲にあわせたものに変えるよう、お願いしたんだ。
「あー、本当だ。ピースの形はこれで正しいのに、絵だけが違うな。元の絵というか、完成図はありますか?」
相原さんに言われ、慌てて池本さんはジグソーパズルに付属の完成予想図(?)を探し出してきた。二枚のオペラ・ガルニエをじっと眺める相原さん。俺と池本さんは固唾を呑んでそれを見守っていた。
「うん・・・これなら何とかごまかせそうだなぁ。アクリル絵の具か、水彩を乾かしてからコーティング剤を塗るか・・・」
ぶつぶつ呟きながら、相原さんは持ってきた大きなキャンバス・バッグの中からいくつか画材を取り出した。とっさにこれだけのものを揃えて持って来られるところ見ると、やっぱりプロの漫画家なんだなぁ、と感心してしまう。
相原さんは、元絵を見ながらささっとピースの色目を整えていく。魔法みたいだ。
大した時間もかからず、仲間はずれのピースはごく自然に周囲に溶け込んでいった。
「相原さん・・・何でも屋さん、ありがとうございます。これで俺は義父のジグソー仲間にならずにすみます」
池本さんは泣き笑いの表情で俺たちに礼を言う。
・・・よっぽど嫌いなんだな、ジグソーパズル。