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ある日の<俺> 4月15日。 安西冬衛にごめんなさい
春。
チャウチャウが一匹、ダックスフントの頭上を越えていった。
・・・
・・・
蓮の台の上で、安西冬衛が溜息をついてるような気がする。けど、見たまんまだし。
横合いからいきなり走ってきた見知らぬチャウチャウが、俺の連れてるダックスフントのダーク君の頭を飛び越して行ったんよ。突然のことで、びっくりした俺は思いっきり尻餅ついてしまった。
ダーク君のリードを持ってる方の手は使えなかったんで、モロにこけてしまった。痛い。走り去る茶色のチャウチャウ。その後を追いかける飼い主らしき男性。・・・飼い犬はちゃんと躾けましょう。
「く~ん?」
ひっくり返った俺を、つぶらな瞳で心配そうに見つめるダーク君。よしよし、俺は大丈夫だから。君を巻き添えにしなくて良かったよ。
「くぅん」
ひゃひゃひゃ、ダーク君、舐めないで、くすぐったい! いい子だから落ち着いて。
ダーク君の頭をひと撫でして立ち上がる。イテ。あー、尻の辺り、痣になってるだろうなぁ。もうオジさんなのに、今更蒙古斑はイヤだ。
春
てふてふが一匹韃靼海峡を渡って行った
安西冬衛