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ある日の<俺> 4月14日。 頑張れ、俺!
朝から、雨がだばだばだば。
午後からはさらに雨脚が強くなった。こんな日には、買い物の依頼が飛び込んで来ることが多い。が、しかし。何でスーパーの特売が今日なんだ・・・! てか、スーパーの特売日に雨降るな! 大っ嫌いだ、鉛色の空なんて。
酒、醤油、酢、塩、砂糖。重いものばっかり。猫田のお婆さんから頼まれたものを自転車の前カゴに積む。こういう時に便利なのが、前垂れ付きのレインコートだ。長い前身ごろの部分をカゴに被せると、荷物は濡れない。
俺自身もあまり濡れない。ま、足元はしょうがないけどな。なんたってペダル漕がなきゃだし。それだって、長靴で何とかなる。
主婦のアイデア商品らしいけど、すごいよなぁ。
「くっ・・・!」
俺は無意識に歯を食いしばった。目の前には、傾斜十度の坂道。猫田さんの家はこの坂を越えたところにある。頑張れ、俺。負けるな、俺。何でも屋は体力で勝負!
雨がだばだばだば。
だばだば、だばだば…だ、しゃばだばしゃばだば
しゃ、しゃっば、娑婆だわ娑婆だわ<『唐獅子株式会社』(小林信彦・著)より。