ある日の<俺> 4月6日。 怪しい撮影者
ののかは今日から新学期だなぁ。もう二年生か。早いものだ。
桜は七部咲き。明々後日の入学式の頃には満開になるだろうか。去年、新一年生だったののかには、ランドセルはまだ大きかったけど、一年過ごした今は、それなりにしっくりしている。
そんなことを考えながらバグのぐーちゃんを散歩させてたら。
不審人物発見。
怪しい、何だあの男は。立ったり座ったり、斜めに伸び上がってみたり、何やってんだ?
近づいて問い質そうとして、止めた。
彼は、お寺の石段の上の陽だまりに寝そべる猫を、手に持った携帯で撮ろうと必死なのだった。
暖まった石段が気持ちいいのか、背中を押し付けてごろごろする猫、角度を変えてベストショットを模索する撮影者。・・・猫、好きなんだろうな。全身から猫大好きオーラが・・・
気持ちは分かるけど、無理するなよ、嫌われるぞ、と心の中でエールを送りつつ、俺はぐーちゃんを連れてそっとその場を立ち去った。
「あーっ!」
悲痛な声に振り返ると、がっくりと項垂れる男の姿。猫に逃げられたらしい。悪いけど、思わず笑ってしまった。
風が吹いて、七部咲きの桜からも花びらが舞い散る。のどかな、春の日の光景。