135/520
ある日の<俺> 3月30日。 弟は姉に似ていました
まだいっぱい花をつけているガーデンシクラメンが、へにょりん。
めいっぱい太陽の方を向いてほこほこしてたデージーが、へにょりん。
へにょりん、って言ったのはののかだけど。
ここ数日、天気が良くて太陽の眩しい日が続いていたのに、うっかり水遣りを忘れた、とまではいかないが、量が少なかったようだ。
春休み中のののかがせっかく遊びに来てくれたのに(引率?はいつものごとく元義弟でののかの叔父の智晴だ)、彼女の楽しみにしていた俺の屋上庭園(屋上プランター野菜畑ともいう)がこのていたらく。──智晴の呆れたような溜息が、イタイ。
「パパといっしょに、お花に水遣りしようか。これ、ののか用の如雨露だよ」
ぱっ、と明るくなる娘の顔。それに目を細めつつ、元義弟の反応にびくつく俺。何でびくつかないといけないんだよ、と内心で呟いた途端、じろりとこちらを見やる智晴。何でだろう。何で怖いんだろう。
・・・智晴って、やっぱり元妻と似てるよな。きょうだいだもんな。
「しゃんとしなさいよ!」と、男女の声がアシュラ男爵のごとくユニゾンで聞こえた気がした。